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松下幸之助「崩れゆく日本をどう救うか」を読んだ。きっかけは3月11日放映のNHK「100分de名著forユース (2)」、視聴後、筆者はSNSに以下の投稿をした。

経済一流といわれた時代に警鐘を鳴らした松下氏

同氏の他の著書も読みたくなり、手に取ったのが松下幸之助「崩れゆく日本をどう救うか」(以下、「崩れゆく日本」)、出版は1974年。エズラ F. ヴォーゲル「ジャパンアズナンバーワン: アメリカへの教訓」の出版は英語版、日本語版とも1979年。つまり、経済が一流であることが世界一の経済大国アメリカにも認められる5年前に現在の姿を見通していた慧眼に驚いた。

前回投稿「『テックラッシュ戦記』著者、元Amazonロビイストの講演傍聴記」では、ミッション(志)の重要性について、渡辺弘美氏の指摘および拙著「著作権がソーシャルメディアを殺す」(2013年)のあとがきの以下の冒頭文を紹介した。

通算21年の海外勤務経験をもち、国内外から日本を見てきた筆者が、現在の日本にいちばん欠けていると思うのは「志」である。国も企業も個人も「志」がないことが、失われた20年をもたらし、いまだに改善の方向も見えない原因ではないかとつくづく思う。

「志」は国でいえば国家戦略である。しかし、民主党政権時代に国家戦略担当相が3年間で6人も代わる事実に象徴されるように、日本には明確な国家戦略がない。

日本に国家戦略がない理由

「崩れゆく日本」を読んで、国家戦略がない理由が解明した。以下、「第1部 沈没寸前の日本」の「4.日本はどこへ行く」から抜粋する。

松下氏は世界中であらそいや紛争がたえない原因として一番大きいのは、各国が自国の利害を中心にものを考え、世界全体の共同の繁栄を二の次にしているからではないかと指摘した上で以下のように続ける。