マイナンバーカードと保険証を紐づけると言うが、それで国民や患者にどのような利点があるのかの説明は全くない。「保険証を持ち歩かなくてもいいですよ」など、話にならない説明だ。知的レベルが低すぎる。高齢者にすれば、今のまま、紙の保険証でも慣れ親しんだもので、いいに決まっている。
医療DXというが、出てくる声は、「研究が進む」「製薬企業が利用できて新薬開発ができる」など、大学・企業目線で、ほとんど国民や患者の直接的な利益が説明されない。こんな視点で政治をしているから、国民は政治に期待できず、投票率は低下の一方だ。
データベース化していれば、「出張時や旅行時に急病になっても、それまでの治療歴を見ることができる」「セカンドオピニオンを求める際に主治医の顔色を伺わなくで済む」「地震などの災害があっても治療の継続ができる」「個別化医療につながる」「医療機関がランサムウエアで乗っ取られても、バックアップデータを利用でき、医療機関の診療継続が可能となる」など、大きなメリットがある。
バックアップを取る際にお金がかかるというが、電子カルテの更新でバカ高いお金を5年おきくらいにむしり取られることを考えれば安いものだ。ただし、大手のIT企業はこのバックアップを取る作業でもとんでもない価格を吹っかけてくる。
電子カルテの統一化というが、今はそんな時代ではない。こんなカビの生えた施策をしているから日本は後進国化しているのだ。医療は間違いなく、未来への投資だ。それを理解しない人たちが、政策を練り、予算案を作る。
もっと真摯に勉強して将来の医療のビジョンを描き、政策に盛り込んで欲しいものだ。
■
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2024年5月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?