映画作りのおもしろさが詰まっている作品
――今回はメインキャストが新たに5名追加されましたが、各キャストさんについても教えてください。
宇賀那:菊地姫奈さんは、とにかく真っ直ぐなキャラクターと芯の強さを演じるのがすごく上手いなと思いました。ミサトがご飯を長く食べるシーンは、現場の連携ミスで菊地さんに話が上手く伝わっていなくて、菊地さんはいつ止めていいのか分からず延々と食べ続けていました。普通だったら途中で限界になって食べるのをやめると思うんですけど、僕が焦って止めるまで菊地さんはずっと芝居し続けていたんですよ。その真っ直ぐさがミサトのキャラクターにすごく合っていたし、すごく魅力的なお芝居をしてくださったなという印象です。
西垣匠さんはパペットとの恋愛パートで、めちゃめちゃベタベタなのをやるから、恥ずかしさが出て、「俺は何をやっているんだ?」と我に帰ったら終わってしまうんですよ。でも、西垣さんはそこを全く疑いなくやってくれたし、物語の中でのゴールが最初から見えていた気がします。だから、エイリアンとのラブコメという新しいところを開拓してくれた感じがしましたね。
三原羽衣さんが演じたレイは、「実はオリーブは自分のペットじゃない」という寂しさみたいなものを孕んでいなければいけないので、そこについてはオリーブへの思いのバランスも含めて三原さんと話しましたね。それから、撮影現場が一番過酷だったんですよ。気温がとんでもない日で、なおかつ代々木公園での撮影もあって、めちゃめちゃハードでした。でも、三原さんはすごく楽しんでいろいろ試してくれて、それがレイに上手く反映されていましたね。
草川拓弥君はそもそもラッパーではないんですよ。だから、芝居だけでなくフリースタイルを覚えなければいけないという、かなりのハードルの高さがあったのに、めちゃくちゃ高いレベルで仕上げてきてくれました。草川君のシーンの撮影日もかなり暑かったんですが、モジャたちだけの芝居のところも「出来るだけ現場で他の人の芝居も見ていたい」と言って現場にいてくれて、すごく芝居や作品に対する愛のある人だなあと思いました。
YU君は感情の沸点を上げるのがめちゃくちゃ上手いなと思いました。YU君のパートは、中身が無茶苦茶なので脚本上だと何が起こるかすごくわかりにくいと思うんです。また、結構ちゃんとカットも割っているシーンなので、集中も途切れがちです。その中で、YU君は、地球が滅びるかもしれないという設定を、滅びるようなシチュエーションの衣装や美術があるわけじゃないところで、気づいたらもう泣いているみたいな芝居まで持っていってくれました。YU君にこのシーンは引っ張ってもらいましたね。
パペットの芝居はギミック的なことで待ち時間が長くなったりやり直しが何度もあったりして、俳優部はモチベーションを保つのがなかなか大変なんですよ。その中でそれぞれ皆さんがとても高いレベルで集中力を保ってくれて、且つそれぞれ色々考えて現場で試してくれたから良い作品になったと思っています。
――本当にキャストさんそれぞれに個性があって、どのパートを見ても感動しました。他に撮影裏話などがあれば教えてください。
宇賀那:CGが入っていないシーンだと、全身ブルータイツの人が後ろに2人立っているので、僕も我に帰るとめちゃめちゃツボに入っちゃうんですよ。みんな芝居しているから、ブルータイツの裏で表情も変わっているし、その様はすごく滑稽です。でも、このバカバカしさが映画作りのおもしろさを体現していて、それが詰まった作品なんじゃないのかなと現場で常々感じていましたね。
――今回も海外展開を考えているんですか?
宇賀那:完成がギリギリだったので映画祭もこれからです。ただ、短編の『モジャ』をモントリオールで上映したとき、モントリオールの方々はモジャが地球を侵略しに来ていたことを全員わかっていました。映画祭にわざわざ来る方々だから、映画好きで、そこを読み取る能力が高いんですよ。そういった方々が今回の映画をどう思うのかはすごく気になるところではありますね。