欧州のカトリック国では30日(木曜日)は「聖体祭」で祝日だった。「聖体」とは生きているイエス・キリストの体を意味し、それを崇敬する祭日だ。イエスが十字架にかかる前、弟子たちにパンを見せて、「これは私の肉だ」といい、ぶどう酒の入った杯をとって「これは私の血だ」と語り、分け与えたという話から由来している。信者はホスチアと呼ばれる小さなパンをミサの時に受けることで生きたイエスが共にあることを祝う。「聖体祭」は初期キリスト教会からあった伝統ではなく、13世紀、ベルギーの教会で始まった風習が今日まで伝わってきたものだ。
聖体祭には聖職者たちが聖体顕示台を抱えて市中を歩く「聖体行列」と呼ばれる儀式がある。行列には神父や司教たちの後に信者たちが列を作って一緒に進む。聖体行列を初めて見た時、新鮮な驚きを感じた。信者たちは讃美歌などを歌いながら路上をゆっくりと歩く。聖体顕示台はモーセ時代の幕屋に似ている。
イエスの十字架の死から3日後の復活(イースター)から始まり、キリスト昇天祭、聖霊降臨祭(ペンテコスト)そして聖体祭を迎えると、教会の春の主要行事は終わる。その意味で、聖体祭は春に終わりを告げる前の最後の儀式、風物詩といえるかもしれない。聖体祭は聖霊降臨祭(日曜日)から2週目の木曜日となっている。いずれも移動祝日だ。
ドイツではバイエルン州やヘッセン州など6州では聖体祭は祝日だが、北部の州ではそうではない。一方、オーストリアはカトリック国なので30日は祝日だ。31日の金曜日を休むと、木、金、土、日の4連休となるため旅行に出かける国民も少なくない。ドイツ方面の高速道路は移動する人々の車で長い列が出来る。
勤労者にとって、一日でも多く休日があるほうが嬉しい。ただ、クリスマスや復活祭は別にして、宗教に関連した祝日の意義や意味を知っている人は少ない。例えば「聖母マリアの被昇天」(8月15日)などの祭日の宗教的意味が分からない人は結構多い。