使用された1ドルは、使用前とまったく同じです。通貨の形態によってはすり減ったり、傷んだりしますが、その名目的な価値は維持されます。

言い換えれば、使い古した1ドル札、または4個の25セント硬貨、あるいは銀行口座にある1ドルの持つ購買力は、完全に同じなのだ。

なぜ通貨供給を増やす必要があると主張する人がいるのでしょうか?

通貨供給量を増やす経済的な理由はまったく存在しませんが、そこには大きな政治的理由があります。

簡単に思いつくのは、なぜ犯罪者が通貨を偽造するのか?という疑問です。

答えは自明です。彼はほとんどコストなしに購買力を欲しているのです。

同じ論理は、かつて錬金術によって鉛を金に変えようとした努力にも当てはまります。誰が通貨を作り出したのか、それが偽造の犯罪者であれ、神秘の魔法使いであれ、あるいは中央銀行であれ、まったく同じ経済原理があてはまります。

つまり最初に通貨を作り出した者の勝ちであり、最後に得た者が負けるのです。これは「カンティヨン効果」と呼ばれ、1720年代初期に初めて記されました。

カンティヨン効果によって、新しい通貨が最初に使われたときは、現在の価格で交換されます。この通貨の新しい買い手はそれを使って市場で入札し、財・サービスを入手します。こうした財・サービスの入札によって、市場での価格が上昇します。

第2段階では、その他の人々も新しい通貨を持っています。彼らもまたそれを使って、自分のために財・サービスを手に入れます。またしても、こうした活動によって価格には上昇圧力がかかります。すべての価格が同じ程度の影響を受けるわけではありません。稀なことかもしれないが、価格が低下する財もあるかもしれません。新しい通貨が経済に広がるときは、均質に(あるいはまったく同じスピードで)広がるわけではありません。

この分析は、ステップ・バイ・ステップの過程を考慮しなければなりません。なぜなら、マクロ経済的な総量の分析では、こうしたミクロ的な効果を見逃してしまうからです。