人間が対応する必然性
それでも生成AIが対応不可能な案件も存在する。たとえばアメリカ大手ITテックの多くは基本的に電話窓口を置いていない事が多い。いや、Eメールすらなく、ユーザー同士が助け合うコミュニティに聞いてくれという対応のところもある。だが、こうした企業が一切電話窓口を置いていないかというそうではない。
たとえばサービスをヘビーに使うと、特別に専属担当者が就いたりする。筆者は実際、複数社で経験してきた。いきなり電話で挨拶が入り、「今後あなたの担当になった」とマレーシアやシンガポール在住のスペシャリストが専属でついて様々なアドバイスやサポートをしてくれるのだ。その対応力、技術や知識量は申し分ない。何を聞いても即答してくれる頼もしい味方だ。その対応力は明らかにバイトや派遣レベルではない。困った時にすぐ相談できるのは大変心強い。だが、こうしたサポートは一般公開しておらず、あくまで一部のロイヤルカスタマーに向けたサービスであり、実質的な「有償のサポートセンター」として機能している。
生成AIではなく、人間が対応する必然性は存在する。多様な顧客ニーズを汲み取り、ユーザーのKPIを達成するためのオーダーメイドなサポートだ。これは最大公約数的かつテンプレ対応が得意な生成AIでは対応できない。だが、コストとの兼ね合いでそんなスペシャリストをすべての顧客に開放できるわけでもない。こうしたサポートにおけるVIPサービスが今後、広がる予感がしている。すなわち、9割のテンプレ対応は生成AIが担い、ロイヤルカスタマーには人間の担当者が対応する形だ。
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コールセンターは感動労働と言われる。ストレス発散のクレームや、寂しさから話し相手を求める利用者も少なくない。どこのセンターにいっても一定数そうした顧客はいた。だが、生成AIが台頭すれば機械相手にそんなことをするのはバカバカしくなり、通話時間は短縮され、ムダなコールも減少するだろう。企業は合理性を追求するので、10年後のサポートセンターにおける景色は一変するだろう。労働人口減少はAIが代替するという未来の話は、コールセンターにおいて現在進行系で進みつつある。
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