コロナワクチンと有害事象との因果関係に関する議論は現在も進行中です。薬剤と有害事象との因果関係をどのように評価するかについては専門家によって長年にわたり議論されてきました。「過去に専門家は因果関係の評価についてどのようなことを議論してきたのか」 について勉強しておくことは極めて大切です。

今回の論考は、米国FDAが2011年に因果関係の評価方法の大転換を図っていたという話です。(参考文献1 、参考文献2)

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米国FDAは、2011年に因果関係があると認定する対象を、事象1より事象2に変更しました。

事象1.CAnnot-be-ruled-out(因果関係を否定できない) 事象2.Suspected Adverse ReAction(疑わしい有害事象)

事象1には、因果関係が否定できない、つまり他の明確な原因が判明しなかった事象はすべて含まれる ことになります。 事象2では、「因果関係があるとする合理的な説明ができる」必要があります。 具体的に言えば、疫学エビデンスなどのエビデンスが存在する必要があるということです。 逆に言えば、事象1ではそれらのエビデンスは必要がありません。

事象1と2を WHOの因果関係評価マニュアル を用いて更に再定義してみます。 個別の症例報告レベルの評価基準は次の6項目となっています。

A1.時間的関係の妥当性
A2.ワクチンが当該事象を引き起こしたという確実な証明
A3.因果関係の集団ベースのエビデンス(疫学的エビデンス)
A4.生物学的妥当性
A5.ワクチン以外で合理的に当該事象を説明できる原因の考慮
A6.再投与などにより同様の有害事象を引き起こした可能性を示すエビデンス