テロ対策の不備が改善したのか

テロ対策の不備に関する事案は2つある。

2020年9月下旬、社員Bが入室IDカードを紛失し、当日未出勤の社員Aの入室IDカードを無断で使用し、中央制御監視室に出入りしていたことが発覚、原子力規制委員会も報告が遅れたことが発覚した。 2021年3月16日、テロリズム対策に関わる侵入検知装置が、長期間機能喪失に陥っていたことが発覚し、原子力規制委員会が、問題の重要度を「最悪」と評価したことに対して、東京電力HD社長小早川智明が謝罪した。2021年4月14日、原子力規制委員会は東京電力HDに対し、状況の改善が追加検査で確認されるまで、柏崎刈羽原発内で核燃料の移動を禁じる是正措置命令(命令は原子炉内への核燃料装填も禁じるため、命令が解除されるまで発電できず、再稼働は不可能になる)の行政処分を下した。

(Wikipediaより)

ケースAについては、偶発的な出来事のようにも見えるが、同様のケースは2015年(平成27年)8月にも起こっていたことが後に明らかになっている。そしてこのケースはシステムの問題というよりは、ヒトと運用の問題とみなすこともできる。

ケースBは、ヒトと運用の問題に加えて、侵入検査装置というシステム自体が壊れていたことに気が付いていなかった。しかもそれが長期間に及んでいたということでより深刻と捉えられよう。壊れていたのに気づかなかったのか、気がついていても長期間対処しなかったのか——いずれにしてもそれに関わるヒトと組織の問題である。

こういったケースの原因をたどっていけば、結局「〝ヒトと組織の劣化〟につながる問題はそう簡単に改善解消できるのだろうか?」という疑問にたどり着く。

地元からすれば東電はかつては優良エリート企業であり、地域の若者の就職先としては東電以上のものはなかった。しかし、私がその筋から仄聞したところ、もう何年も前からそのような地位は消え失せ、地元の有能な若者の採用に苦心していたとのこと。

ヒトの劣化の問題は地元の問題ではない。それは企業ガバナンスの問題であるから、東電そのもののガバナンスが劣化していることの現れとみるべきだろう。

テロリズム対策の不備が改善したと判断したというが、根底の問題はヒトの問題であり組織ガバナンスの問題である。そうそう容易に改善されるのであろうか——というのが私が抱く深い悩みである。

再稼働の条件—地元のパワーバランス・県民意思

刈羽原子力発電所6、7号機を再稼働するには地元の同意が得られないといけない。地元とは、刈羽村、柏崎市、そして新潟県である。

柏崎市の桜井市長は近頃は再稼働容認に前向きだと聞く。

よく分からないのは、新潟県知事の花角氏である。花角知事は27日、再稼働の是非に関しては最終的には県民の意思を確認するために「信を問う」としている。

知事は「『信を問う』とは自身の存在をかける意味合いが強いと思う。いま決めているものはないが、方法としては選挙ももちろんある」と述べて、県知事選を県民意思の確認の選択肢の一つと考えているようだ。

前知事の米山隆一氏は「やり残した仕事がある」と仮に県知事選があれば、代議士職を辞して出馬する意向をほのめかしている。

前知事の米山隆一氏Wikipediaより

政府は「再稼働への関係者の総力の結集」を謳い再稼働を加速する意向である。再稼働はもちろん東電の悲願である。

しかし、柏崎・刈羽原子力発電所の再稼働は日暮れて途遠しの感が否めない——という他ないと私は思う。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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