もちろん昨年のアップルウォッチの特許侵害にかかる一時的な販売停止という悪いイメージもあるでしょう。iPhone15については評価があまり聞こえてこないのは消費者が大金をはたいてでも欲しくなる新しい何かがついているわけではない、ということかもしれません。もちろんオタクの方は異見があるでしょうが、アップルという巨大会社が一般向けに販売する商品としてはインパクトがなくなってきており、買い替えのサイクルは長くなるだろう、ということです。
個人的にはもう一つ、テスラの10-12月期の販売台数が四半期としては過去最多の48万台だったのですが、中国のBYDが53万台を売りEV販売世界トップになった点が気になっています。テスラについては新規開発のペースが遅すぎるのに対してBYDの世界市場への攻め方が極めて積極的となっている点からテスラが「独走する覇者」だとは誰も思わなくなったことがあります。携帯電話でいうアップルとサムスンの戦いのようなものですが、問題はEV車の群雄割拠はこれから始まるわけで携帯電話のような成熟後の市場構成とは違う点でテスラの本気度が試される時期になっています。
また経営的に分析すると神7には垂直統合型事業形態とそうではないタイプの2通りがあり、双方の力が試されています。垂直型はテスラとグーグル、エヌビディア。そうではないのがアップル、中立がマイクロソフトとメタでしょうか?アマゾンはまだ方向感が見えない気がします。ただ、株価だけを見れば垂直型のテスラとグーグルは他の神7に対してはやや劣勢なのです。垂直型の良さは開発が早いこと、利益総取りになること、経営方針の伝達がスムーズであることが上げられます。一方、自社で全てを抱え込むためリスクが大きく、技術改善は進みにくくなります。
例えばマイクロソフトがオープンAIに出資はするものの別会社であることはプラスなのです。オープンAI社のガタガタ事件があった際、マイクロソフトが同社の頭脳を一時的に抱き込もうとしましたが、あれは経営戦略的には間違いだし、事実、サム・アルトマン氏がオープンAI社に戻る際にはマイクロソフトはむしろ背中を押した感じでした。
こう見ると神7は経営的に次のクリフ(崖)をどう攻略するかその判断が各社ばらついているともいえます。生成AIは事業としてはまだどの切り口が勝者なのか、判断がつきにくいと思います。例えばマイクロソフトやグーグルが開発する汎用型が良いのか、例えば日本語など特定言語に特化したLLM(大規模言語モデル)に分があるのか、この辺りは今後見えてくるでしょう。言語特化型が伸びるなら日本の「神セブン」がライバルの出現で崩れていったように神7もうかうかしていられなくなります。
その点からは神7の多少のシャッフルはあるのかもしれません。それにいつも同じメンバーだと飽きてしまうし刺激が足りないと思います。他の企業にモチベーションを与えるという意味でも適度な入れ替え戦は健全なマーケットと経済成長を促すのでしょう。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年1月5日の記事より転載させていただきました。
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