事業経営のリスクには二階層があって、第一は、事業の目的として明確な意図をもって積極的にとる本源的リスクであり、第二は、そのリスクをとったことによって、意図しないにもかかわらず受動的にとらざるを得なくなる様々な付随的リスクとなる。
本源的リスクをとることは、能動的な意味をこめてリスクテイクと呼ばれ、付随的リスクについては、能動的にとられるものではないので、マネッジ、もしくはコントロールという用語が使われていて、日本語ではリスク管理と呼ばれる。
リスク管理の対象となるリスクは、意図しないリスクだから、最小化されるべきだが、そのためには必ずコストを発生させ、また、いかに努力を徹底したとしても、リスクは完全にはゼロにならないから、残余リスクは自己資本の充実によって吸収させるほかなく、そこに資本コストを発生させる。
故に、リスク管理という機能は、リスク削減とコスト削減との相反関係について、最適な状態を維持し、また残余リスクに対して適切な資本配賦を行うものとして、経営上の重要な役割を演じているわけだ。
保険は、不確実なリスクについて、確定したコストとしての保険料を対価にして、それをゼロにする仕組みであって、保険においては、将来に発生し得る不確実なコストとの等価交換として、現在の確実なコストとしての保険料が算定されているので、将来の不確実なコストの現在価値としてのリスクの意味が明瞭に示されているわけである。この将来の不確実なコストとしてのリスク認識こそ、経営におけるリスク管理の要諦である。