上司と部下のコミュニケーションが少ない 長時間労働が蔓延している 失敗が許されない

典型的なブラック企業といった職場環境だ。

「歩合給」はブラック企業の象徴なのか?

ビッグモーターに限らず、ノルマが社員に課せられる会社は珍しくない。そんな会社で多く見られる賃金制度が歩合給である。歩合給がどういう賃金制度か改めて説明したい。歩合給とは、社員が出した成果(売上や契約件数)に応じて賃金額が決まる制度である。

カーディーラーの営業マンを例に考えてみよう。営業マンが会社と、自身の売上の10%を給料として受け取る契約を結んだとする。その営業マンが1000万円のベンツを1台売れば、10%の100万円を給料として貰うと説明すると分かりやすいだろう。当然ビッグモーターにも歩合給があった。

ただ、この歩合給がブラック企業の象徴のように語られることが最近増えてきた。基本給などの固定給が極端に低く抑えられ、歩合給の割合が高すぎると、無茶な営業活動をするなど不正行為に結びつくことも少なくない。このような理由から、歩合給を取り入れている企業はブラック企業と見られがちだ。

2022年8月、引越し業界大手サカイ引越センターの労働組合が、5万円に抑えられている基本給の引上げを求めて記者会見を開いた。サカイ引越センターの賃金制度も、低い基本給と歩合給という組み合わせだった。

これほど有名な会社で、基本給が5万円というニュースのインパクトは非常に強かった。このようなニュースが流れると「歩合給を導入している企業=ブラック企業」と思われても仕方ない。

歩合給を即ブラック企業に結びつけるのは間違い

ビッグモーターやサカイ引越センターのニュースの影響で「歩合給を導入している企業=ブラック企業」というイメージが持たれてしまう場合もあるが、歩合給を即ブラック企業に結びつけるのは間違いだ。

誤解されることも多い歩合給だが、適切に導入すれば社員のモチベーションを上げる賃金制度になりうる。一方で、適切に導入がされていないと、ビッグモーターのような事件の引き金になり得る賃金制度であることは確かである。

では歩合給がうまく機能しているのはどんな企業か?歩合給が導入されている割合が高い業種・職種をいくつか挙げてみたい。

運送会社やタクシー会社のドライバー。保険会社、車のディーラーなどのセールス関係の会社などだ。こういった会社は当たり前のように歩合給が導入されており、社員から大きな不満も出ていないケースも多い。

もちろん、社員もそれを分かったうえで入社しているからという側面も大きいが、こういった業種では歩合給の割合を減らしすぎるとむしろ社員から不満が出るケースもある。

「頑張っても給料が変わらないならやりがいがない」 「自分の実力で稼ぎたいからこの仕事をやっているのに」

頑張ったら高賃金で報いて欲しい、自分のスキルアップが高収入に結びついて欲しいと考えるのは当然だろう。

歩合給を導入していない会社は、昇給や昇格で社員のニーズを満たし、歩合給を導入する会社は、社員が上げてきた成果に直結する賃金制度で報いる。どちらが良いかは働く側が選べば良い。

社員のニーズに合っているのなら、そして違法行為がなければどちらのやり方でも問題はない。

では、ノルマや歩合給をどのように運用している企業が絶対に避けるべきブラック企業なのか? これは後半で説明したい。

林 秀樹 社会保険労務士 林労務経営サポート代表 株式会社エンパワーマネジメント代表取締役 社会保険労務士。林労務経営サポート代表。株式会社エンパワーマネジメント代表取締役。1972年生まれ。2001年に社会保険労務士事務所「林労務経営サポート」を開業。2018年に人事コンサルタント会社「株式会社エンパワーマネジメント」を設立。訴えられない会社作りをモットーに、他の社会保険労務士が敬遠しがちな「運送業の未払い残業代対策のための賃金制度作成」「問題社員対応」等を得意とする。「1DAY就業規則作成サービス」を開発し全国各地に顧問先を持つ。上場企業で企業リスクに関するセミナー講師の実績も多数。

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年10月11日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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