IAEAは過去、パルチン施設に関する調査を行ったことがあるが、アクセスが制限され、これまで完全な監視が行われていない。イラン政府は核兵器の開発を否定しており、これらの施設が平和的な目的で使用されていると主張してきた。

ネタニヤフ首相の発言に注目される点は、「イランの核プログラムそのものやその運用能力はまだ無力化されていない」という箇所だ。「核プログラム」とは、イランが進める核燃料の濃縮活動や関連インフラを指すものと受け取れる。特に、ナタンツ(Natanz)やフォルドウ(Fordow)といった主要なウラン濃縮施設での活動だ。これらの施設では、ウランを核兵器に必要な高濃度(90%以上)へ濃縮できる可能性が指摘されてきた。イランは現在、ウランを60%まで濃縮しており、これは核爆弾に近いレベルに到達する前段階だ。ちなみに、原子力発電所用の濃縮ウランは3.7%だ。IAEAによると、イランは非核保有国としては唯一、濃縮度60%のウランを保有している。

次に、「運用能力」とは、核兵器を実際に使用可能な形で配備する能力、つまり核弾頭の製造と、それを搭載する弾道ミサイルの開発を意味するはずだ。イランは過去に弾道ミサイルの開発を加速させており、国際社会では、この技術が核兵器の運搬手段として利用される懸念が高まっている。また、固体燃料ロケット部品の製造施設がイスラエルの攻撃対象となったことも、こうした懸念の一部を反映していると考えられる。

ネタニヤフ首相が「まだ無力化されていない」と述べたことは、これらの二つの側面――核燃料の濃縮プロセスの維持と、核兵器運用のための兵器システム開発――が依然として続いていることを意味するはずだ。すなわち、10月26日のパルチン施設への攻撃はイラン核計画の無力化への第一歩といえるわけだ。

イランは2015年、米国、中国、ロシア、フランス、英国、ドイツと、イランの核プログラムを制限する核合意を締結した。しかし、米国は2018年、当時のドナルド・トランプ大統領の下でこの合意を破棄し、イランに対する制裁を再導入した。それに対抗する形で、イランは合意の義務を果たすことを止め、核関連活動を継続してきた経緯がある。今年7月に就任したイランのペセシュキアン大統領は、核合意の復活を支持し、イランの孤立状態を終わらせることを願っているといわれるが、トランプ氏のホワイトハウス復帰が、イランと米国の間の緊張をさらに高める可能性が出てきた。