第1号プロトはセンターハンドルの農耕用だった!
ディフェンダーはランドローバーそのものである。今日こそランドローバーブランドには、レンジローバーとランドローバー、ディフェンダーの3体系が存在するが、そもそもの直系はディフェンダーである。1948年のアムステルダム・モーターショーで発表されたシリーズ1がその祖となり、進化・発展して今日のディフェンダーにつながる。
幸運なことに、そんな歴史的なモデルをほぼすべて運転した経験がある。場所は彼らのテストフィールドとなる英国イースナー。オフロードコースで、ランドローバーシリーズ1、シリーズ2、シリーズ3、そしてクラシック・ディフェンダーの順にハンドルを握った。余談だが、このときの体験で、クルマの開発は真っ直ぐ走らせるのが一番難しいことがわかった。カーブは曲がる方向へハンドルを向ければ曲がる。だが、真っ直ぐは左右にカウンターを当てなければ走らない。それが進化とともに、カウンターの幅が狭くなり、今日のように10時10分に手を置くと真っ直ぐ走るようになるのだ。
ちなみにいうと、そんなランドローバーの元ネタはジープである。第2次大戦でGI(アメリカ兵)が英国に残していったMAもしくはMB型がそれだ。当時ローバー社の役員がジープを自ら改造して自分の趣味の畑作業に使っていたのがすべての始まり。なので、このブランドは軍用車のために開発されてはいない。ジープとの違いはそこになる。農耕車として開発したため試作車はフロント真ん中に1名、後方2名のレイアウトだった。リアにエンジンを置くトラクター方式。でも市販車となるとフロントエンジンのほうがいいとなり、右ハンドルになる。真ん中だとエンジンが邪魔でステアリングシャフトが通らないからね。とはいえ、その後英国領を含めクラシック・ディフェンダーは軍用車として使われるからユニーク。血統がそうさせたのだろうか。
話をディフェンダーに戻す。その誕生は1983年。ランドローバーシリーズ3のマイナーチェンジ版だ。ただ名前が変わるのは1989年から。この年にランドローバー・ディスカバリーが誕生し、混乱を避けるためディフェンダーとなった。
クラシック・ディフェンダーはそれから2016年まで続くが、印象的なのは50周年モデル。1998年に左ハンドルのATが、翌年に右ハンドルのMTが製造された。どちらも4リッター・V8を搭載。北米でしか売れないと思ったら英国でも引き合いがあったため、慌てて右ハンドルを追加した感じだ。
そんなクラシック・ディフェンダーをモダンに仕上げたのが今日のモデル。立役者はデザイナーのジェリー・マクガバンだろう。ローバー時代はMGFを手掛けた。代表作のひとつにレンジローバー・イヴォーグもある。というか、今日のラインアップの全責任者だ。自分の家とそこに置く家具も自ら線を引くほどデザインへのこだわりは強い。スーツはサヴィルローのヘンリープール。何回もインタビューしているが、いい感じのクセ者である。ここではそんな彼の自信作モダン・ディフェンダーに注目する。
ディフェンダー130/全長5275mmのBIGキャビン4WD
ディフェンダーは、ランドローバーの主力モデル。21世紀車として全面刷新された現行型は、130/110/90の3シリーズ構成となる。130は、5275×1995×1970mmの大型ボディ。ホイールベースは3020mmで110系と共通。110比でリアのオーバーハングを拡大している。
車種ラインアップはX-DYNAMIC SE D350/X D350/OUTBOUND D350/V8 500を展開。D350系はマイルドHV仕様の3リッター直6ディーゼルターボ(350ps/700Nm)、V8・500はネーミングどおり5リッター・V8スーパーチャージャー(500ps/610Nm)を組み合わせる。シートは3列・8名乗りを基本にグレードに応じ3列・7名乗り、2列・5名乗りを用意する。2025年モデルはディーゼルエンジンの最高出力が従来の300psから350psに増強、ワイヤレスデバイスチャージングなど装備が一段と充実した。