これぞFRスポーツ、シャープなハンドリングに感激

 サスペンションは前後とも、ダブルウィッシュボーン式を採用している。エンジンはフロント・ミッドにマウントした。そうすることで、50対50に限りなく近い理想的な前後重量バランスを実現している。

 ホイールベースを2265mmと短くして運動性能を高め、前後のヨーイングモーメントを小さくするなど、努力の跡がうかがえる。ハンドリング向上のための、真正面からのトライはうれしい。

 試乗車は、パワーステアリング付きだった。ハンドリングは、軽快そのもの。これこそライトウェイトスポーツだという走りの楽しさを存分に味わった。
 ステアリングを切ると、ノーズは間髪を入れず向きを変える。リアはスッと沈みながら、これまた瞬時に追従してくる。ハンドリングのゲインの高さは、ポルシェ944やRX-7を大きく凌いでいる。しかし、この高いハンドリングゲインに、無条件で拍手を贈る気にはなれない。ゲインの高さがときにドライバーをナーバスにするからだ。タイヤ温度の低い場合はとくにそうである。

【時代の証言_日本車黄金時代】祝デビュー35周年! 1989年マツダ・ユーノス・ロードスター(NA型)は往年のオープンスポーツの味を鮮やかに再現
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)
【時代の証言_日本車黄金時代】祝デビュー35周年! 1989年マツダ・ユーノス・ロードスター(NA型)は往年のオープンスポーツの味を鮮やかに再現
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 ロードスターの標準装着タイヤは、グリップの温度依存性が高め。つまり、ある程度ガンガン走り込んでタイヤ温度を上げてやらないと、グリップレベルも上がらない。
 タイヤ温度が十分に上がってくると、ゲインとグリップのバランスはぐっとよくなる。神経を使わずに、シャープなハンドリングを楽しめるようになる。コーナリング限界も高くなり、滑りの挙動は頼もしく地に足がついた、安心感のあるものに変わる。

 好ましい状態になったシーンでのハンドリングは、最高に楽しい。ドライバーは愉快そのもの。日常とは別次元の爽快な喜びに浸って、いつまでもステアリングを離したくない、という気持ちになる。
 わずかなステアリングアクションで、気持ちよくノーズは向きを変え、クルマはピタッとイメージしたラインに乗ってくれる。しなやかに、軽やかに、そしてハイスピードでコーナーを駆け抜けていく。ややアンダーぎみになったら、ステアリングを速めのアクションとともに切り増しながらパワーオンして、オーバーぎみにジワリと姿勢を変えるのもいい。アクセルを一瞬オフにしてタックインを誘い、それをきっかけにオーバーに持ち込むといった、鋭角的なコーナリングにトライするのも面白い。とにかく、自由自在。どんな姿勢にでも持ち込める。

 こんなときのロードスターの走りは、スニーカーを履いて自由に身軽に、思いのままに駆け回る……そんなイメージである。タイヤ温度の低いうちは、確かにタックインはいささか急。だがタイヤ温度が上がるにつれて、路面をしっかり踏ん張りながらテールが流れるといった、とても安定した挙動に変わる。

【時代の証言_日本車黄金時代】祝デビュー35周年! 1989年マツダ・ユーノス・ロードスター(NA型)は往年のオープンスポーツの味を鮮やかに再現
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 フルオープンボディといえば、ボディ剛性不足が心配だろう。ロードスターはその点もかなり高水準に達している。むろんクローズドボディ並みとはいかないが、ハイスピードでコーナーを攻めても不足感はとくにない。不正路面で安っぽいキシミ音、ビビリ音をたてるようなこともない。
 ハードトップを装着すると剛性感はより向上する。日常的な快適性もアップする。ルックスもゴキゲンだし、ハードトップがお勧めだ。

 ブレーキはフロントがベンチレーテッド、リアはソリッドの4輪ディスクだ。ペダルの剛性感は高く、踏み応えはしっかりしていている。
 小さな弱点くはあるが、ロードスターの魅力は絶大だ。ルックスは文句なくカッコいいし、キビキビしたハンドリングは最高。ボクは、自分のロードスターをどんな色に塗り替えようかと悩んでいる。
※CD誌/1989年8月26日号掲載

【時代の証言_日本車黄金時代】祝デビュー35周年! 1989年マツダ・ユーノス・ロードスター(NA型)は往年のオープンスポーツの味を鮮やかに再現
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

提供元・CAR and DRIVER

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