これぞFRスポーツ、シャープなハンドリングに感激
サスペンションは前後とも、ダブルウィッシュボーン式を採用している。エンジンはフロント・ミッドにマウントした。そうすることで、50対50に限りなく近い理想的な前後重量バランスを実現している。
ホイールベースを2265mmと短くして運動性能を高め、前後のヨーイングモーメントを小さくするなど、努力の跡がうかがえる。ハンドリング向上のための、真正面からのトライはうれしい。
試乗車は、パワーステアリング付きだった。ハンドリングは、軽快そのもの。これこそライトウェイトスポーツだという走りの楽しさを存分に味わった。
ステアリングを切ると、ノーズは間髪を入れず向きを変える。リアはスッと沈みながら、これまた瞬時に追従してくる。ハンドリングのゲインの高さは、ポルシェ944やRX-7を大きく凌いでいる。しかし、この高いハンドリングゲインに、無条件で拍手を贈る気にはなれない。ゲインの高さがときにドライバーをナーバスにするからだ。タイヤ温度の低い場合はとくにそうである。
ロードスターの標準装着タイヤは、グリップの温度依存性が高め。つまり、ある程度ガンガン走り込んでタイヤ温度を上げてやらないと、グリップレベルも上がらない。
タイヤ温度が十分に上がってくると、ゲインとグリップのバランスはぐっとよくなる。神経を使わずに、シャープなハンドリングを楽しめるようになる。コーナリング限界も高くなり、滑りの挙動は頼もしく地に足がついた、安心感のあるものに変わる。
好ましい状態になったシーンでのハンドリングは、最高に楽しい。ドライバーは愉快そのもの。日常とは別次元の爽快な喜びに浸って、いつまでもステアリングを離したくない、という気持ちになる。
わずかなステアリングアクションで、気持ちよくノーズは向きを変え、クルマはピタッとイメージしたラインに乗ってくれる。しなやかに、軽やかに、そしてハイスピードでコーナーを駆け抜けていく。ややアンダーぎみになったら、ステアリングを速めのアクションとともに切り増しながらパワーオンして、オーバーぎみにジワリと姿勢を変えるのもいい。アクセルを一瞬オフにしてタックインを誘い、それをきっかけにオーバーに持ち込むといった、鋭角的なコーナリングにトライするのも面白い。とにかく、自由自在。どんな姿勢にでも持ち込める。
こんなときのロードスターの走りは、スニーカーを履いて自由に身軽に、思いのままに駆け回る……そんなイメージである。タイヤ温度の低いうちは、確かにタックインはいささか急。だがタイヤ温度が上がるにつれて、路面をしっかり踏ん張りながらテールが流れるといった、とても安定した挙動に変わる。
フルオープンボディといえば、ボディ剛性不足が心配だろう。ロードスターはその点もかなり高水準に達している。むろんクローズドボディ並みとはいかないが、ハイスピードでコーナーを攻めても不足感はとくにない。不正路面で安っぽいキシミ音、ビビリ音をたてるようなこともない。
ハードトップを装着すると剛性感はより向上する。日常的な快適性もアップする。ルックスもゴキゲンだし、ハードトップがお勧めだ。
ブレーキはフロントがベンチレーテッド、リアはソリッドの4輪ディスクだ。ペダルの剛性感は高く、踏み応えはしっかりしていている。
小さな弱点くはあるが、ロードスターの魅力は絶大だ。ルックスは文句なくカッコいいし、キビキビしたハンドリングは最高。ボクは、自分のロードスターをどんな色に塗り替えようかと悩んでいる。
※CD誌/1989年8月26日号掲載
提供元・CAR and DRIVER
【関連記事】
・「新世代日産」e-POWER搭載の代表2モデル。新型ノートとキックス、トータルではどうなのか
・最近よく見かける新型メルセデスGクラス、その本命G350dの気になるパワフルフィール
・コンパクトSUV特集:全長3995mm/小さくて安い。最近、良く見かけるトヨタ・ライズに乗ってみた
・2020年の国内新車販売で10万台以上を達成した7モデルとは何か
・Jeepグランドチェロキー初の3列シート仕様が米国デビュ