携帯キャリアは通信事業だけでなく、銀行や証券会社など自社グループでさまざまなサービスを提供しています。携帯電話利用者によるそれらの利用状況について、MM総研が行った調査の結果を見ていきましょう。
携帯キャリアと銀行のクロスユース率、第1位は「楽天」
ICT市場調査コンサルティングの株式会社MM総研(MMRI)は、15~79歳の携帯キャリア4社を利用している男女3万2916人を対象に「金融/証券サービスの携帯キャリア別利用状況調査」を実施し、その結果を2024年10月17日に発表しました。
クロスユース率とは、携帯電話利用者が契約先の携帯キャリアが提供するサービス(提携先も含む)を「最も利用している」と回答した比率のことで、どれだけ「利用者の囲い込み」につながっているかの指標となるデータです。
まずは、携帯キャリアと銀行サービスのクロスユース率を見ていくと、「楽天モバイル」ユーザーによる「楽天銀行」の利用率は前年調査より1.2ポイント増の52.6%と最も高く、そのうち、楽天銀行をメインで利用しているユーザーの割合(クロスユース率)は1.8ポイント増の23.1%と、こちらもダントツの1位でした。
また、「au」ユーザーによる「auじぶん銀行」の利用率は2.6ポイント増の15.2%で3位、クロスユース率は0.7ポイント増の3.3%で2位にランクイン。「ソフトバンク」ユーザーによる「PayPay銀行」の利用率は1.7ポイント増の15.5%で2位、クロスユース率は0.4ポイント増の2.9%で3位という結果になっています。
なお、「ドコモ」は三菱UFJ銀行とdアカウントを連携し、携帯電話料金の支払いをするとdポイントが貯まる「dスマートバンク」を提供していますが、dスマートバンクから振り込み操作ができないなど制約も多いサービスのため、クロスユース率からは除外されています。
携帯キャリアとメインで利用している銀行サービスの利用状況を見てみると、「ドコモ」「au」「ソフトバンク」ユーザーの1位が地方銀行であるのに対し、「楽天モバイル」ユーザーは「楽天銀行」がトップとなっています。
楽天モバイルは、モバイル契約者が銀行口座を開設し、一定の条件を達成するとポイントがプレゼントされるキャンペーンを実施したり、楽天銀行、楽天証券、楽天生命保険を契約していればモバイル申し込み時に本人確認が簡素化される「ワンクリック申し込み」に対応したりと、モバイルユーザーの銀行口座開設を促すサービスを展開。こうした施策が、クロスユース率の高さにつながっているのかもしれません。
携帯キャリアと証券サービスのクロスユース率でも「楽天」がトップに
携帯キャリアと証券サービスのクロスユース率を調べると、1位の「楽天モバイル」ユーザーによる「楽天証券」の利用率は32.3%で、クロスユース率は前年から3.0ポイント増の24.3%と、他社を大きく引き離してダントツトップにランクイン。
2位が「au」ユーザーによる「auカブコム証券」のクロスユース率で、0.6ポイント増の2.4%、3位が「ソフトバンク」ユーザーによる「PayPay証券」のクロスユース率で、0.3ポイント増の1.3%、4位が「ドコモ」ユーザーによる「マネックス証券」のクロスユース率で、0.4ポイント増の1.8%でした。
さらに、証券口座を所持しているユーザーに対し、メインで利用している証券会社を尋ねたところ、「楽天モバイル」ユーザーによる利用率トップは「楽天証券」で、「SBI証券」の10.4%を大きく引き離して24.3%でした。また、2023年10月から提供している国内株取引(現物・信用)手数料が無料になる「ゼロコース」の人気もあってか、「楽天証券」は「au」と「ソフトバンク」のユーザーでも1位となっています。
キャリア傘下ではないにも関わらず上位に食い込んでいる「SBI証券」は、2023年9月から取引報告書や各種交付書面を郵送から電子交付に切り替えたユーザーを対象に、国内株取引(現物・信用)などの売買手数料を無料化したことが影響しているのかもしれません。
また、「au」ユーザーでは前年ランク外であった「auカブコム証券」が4位にランクイン。通信と金融サービスを融合させた新料金プラン「auマネ活プラン」がスタートし、「auカブコム証券」でクレカ積み立てをするとポイント還元率がアップする特典や各種キャンペーンなどをきっかけに、利用者が増えていることが予想されます。