これが宿泊地となればもっと複雑な価値観を提示します。先日、2拠点居住地はよいと申し上げました。ただし、その際、さほど遠くなく、いつでも通えるところと書かせていただきました。別荘でもせいぜい1時間程度で行け金曜日仕事を終えてからすっと行けてできれば月曜日早めに出れば朝の出勤時間に間に合うぐらいのところなら2拠点居住地の価値はかなり向上します。
一方、旅行となると常に前向きのサプライズやワクワク感を求める為、毎週というわけにはいきません。例えば皆さんに毎週一泊温泉旅行に行きたいか、言われたらNOだと思います。理由は金銭でも時間でもないのです。「そこまでしてまで」という飽きではないかと思うのです。
今から20‐30年前、世界ではタイムシェアホテルのビジネスが話題になりました。一定金額を払い年間〇ポイントを購入、そのポイントを使って1週間単位で指定の宿泊先に泊まれる、というものです。私の前の勤め先でもタイムシェアビジネスをやっていましたが、非常に苦労していたのをはた目で見ておりました。旅行に来た客に餌を見せてセールスセンターに連れ込み90分という時間枠で「〇ドル払えば世界中のこんな素晴らしい宿泊施設に泊まれるのですよ、さぁ、今、すぐに決めてください」というわけです。成約率は笑えるほど低く、マーケティングコストが異様なほど膨れ上がっているのを社内報告書で読んだ記憶があります。タイムシェアビジネスは顧客も事業主も血みどろだったのです。
今、サブスク旅行が流行っていると日経が報じるならその記者はタイムシェアビジネスを知らないのかもしれません。いや、知っていたとしてもそれが現実問題、どれぐらい禍根を残すことになるのかは肌感覚としてないのでしょう。
私は断言してもよいのですが、サブスク旅行は流行りません。理由は別荘でもない、旅行でもない非常に中途半端な立ち位置になるからです。ましてや今、ネットで無数の旅行先が簡単に選べ、体験できる上に時期によっては破格の値段でオファーがあります。旅行とは新天地を経験することに重みがあり、「あそこ、まだ行ってないよね」という感覚が大事なのだと思います。もちろん、同じところに行きたいという方はいらっしゃいます。ただ比率としては非常に小さいと思うし、そのコミットメントを3年間、期待できるかといえば厳しいのです。なぜなら必ず、不満になるあれやこれやが見えてくるのです。すると販売する側は常に高いコストのマーケティング攻勢をかけ続けなくてはならず、正直、体力勝負となるでしょう。