太宰の人生を振り返れば、堕罪の絶望や憂鬱に満ちた名言も理解できます。本書に掲載されている100を超える太宰の「ネガティブ名言」の中からいくつかをご紹介します。
生きてゆくから、叱らないで下さい(「狂言の森」) ちかごろの僕の生活には、悲劇さえ無い(「正義と微笑」) 水は器にしたがうものだ(「ダス・ゲマイネ」) 自分が誰だかわからなかった。何が何やら、まるでわからなくなってしまっていたのである(「誰」) 姉さん。僕には、希望の地盤が無いんです。さようなら(「斜陽」)
人生を生きていくにあたって、あるいは残念な人生を楽しむ際に、文豪たちのこうした言葉がそっと寄り添い、慈しんでくれるだろうと編者は残しています。
名だたる文豪たちも私たちと同じ人間であり、悩み苦しみながら、人生を生きてきたことが理解できます。文豪があなたの心に寄り添い、慰めてくれるかもしれません。
憂鬱な気分のときに「頑張れ!」「諦めなければ道は開ける!」「死ぬ気で頑張れば乗り越えられる!」。世の中には、ポジティブな言葉がたくさんありますが、失敗や挫折を繰り返しているときはつらいだけでしょう。
憂鬱、絶望、厭世(えんせい)、狂気に満ちた本書を読めば、文豪がますます好きになることは間違いありません。一味違った名言本の良さを体感してみたいとは思いませんか。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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2年振りに22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)