70代でも80代でも必要なら今すぐ訓練をすれば、半年後には使いこなせるようになっているはずだ。筆者は脳科学の専門家ではないが、おそらく脳トレで小学生向けの計算ドリルなどを頑張るより、パソコン教室に通ってPCを使う方が遥かに脳にポジティブな影響を与えると考える。
アナログ対応は全員が損をする会社でも役所でも、一人でもITが苦手な人間が入るとそこにあわせた設計になりがちだ。本来はデジタルで効率的に処理をしたいのに、紙の運用になったりして全員が非効率性を我慢することになる。
PCが普及しだした平成初期の「デジタル化までの暫定処理」というならまだわかるが、国民のほぼ全員がスマホを持つ令和にやることではない。できない人はしっかり損をすればいい。厳しく聞こえるが冷静に考えれば当たり前の話だ。通常、会社の仕事や納税や役所の手続きで何ら自助努力をせず「わからないのでできません」といえば、置いていかれて損をするのが普通だ。それなのになぜかITだけが免罪符になっている。これは明らかにおかしい。
人間は得をしなくても気にならないが、損をするのは許容できない生き物なので、PCが使えないと損をするとなれば「苦手」といって逃げまわるお年寄りも努力して社会にキャッチアップするようになる。
厳しい意見に聞こえるが、結果としてこの荒療治は何より本人のためになる。ITに強くなれば必要な情報を自らの意思で獲得する力になるし、詐欺に騙されることも減る。脳へのいい刺激になり、引退後も社会とのつながりを保ち孤立を防止できるだろう。実は使えない本人が一番損をしていることに気づいていないのだ。
◇
デジタルデバイド、という言葉が2000年代に流行ったが本来の意味は「ITインフラが整備されていないことで生じる格差」というものだったはずだ。日本におけるデジタルデバイドは「やりたくない」と駄々をこねて周囲にアナログ対応をさせているだけである。もうできない人に合わせて非効率な社会設計を維持する余裕はないはずだ。