中古車販売・買取会社「ビッグモーター」の様々な不正やパワハラ問題が世間を騒がせています。
一番本質的に問題なのは客の車をわざわざ傷つけて保険金を不正請求していた部分ですが、世間的に印象がめっちゃ悪かったのは店舗前の視認性を高めるために?(あるいはひょっとするとただ幹部の視察の時の掃除の手間を省くためという説も)街路樹に除草剤を撒いてわざわざ枯らせていた話で…
また、創業社長氏とその息子の副社長氏(現在は両者とも退任)のキャラが濃すぎて、日本に暮らす色んな人の感情的なスイッチを刺激してしまうところがあって、こういうのが嫌いな人にはもう根本的に「受け付けられない大問題」という感じになっている。
ただこの問題は、日本という社会で働くあらゆる人が密接に絡まり合う中で玉突き事故的に発生するタイプの課題なので、じゃあビッグモーターという会社を一個潰してしまえばそれで済む問題かというとそういう感じでもないんですよね。
私は外資コンサルからキャリアを初めて今は中小企業相手のコンサルタント(とはいえこういうブラック企業は直接の顧客にはいないですが間接的に見聞きはします)なので、普段こういうブラック企業と触れたことがないタイプの生活をしている人と比べると、大分色んな事情が理解できるところがあります。
ついでに、自分のクライアントの地方の中小企業において、過去10年で平均給与を150万円ほど引き上げることができた例もあって、恵まれた都会の会社以外でも「変わっていく」にはどうすればいいかを理解している方だと思います。
そこで、
日本社会においてこういうブラック企業がどういう経緯で生まれてくるのか、どうすればいいのか?
…について考える記事を書きます。
1. あなたのすぐ隣にもあるブラック企業普段の生活においていわゆる「ブラック企業」との関係がほとんどない人生を歩んできた人からすると、ビッグモーターみたいな会社ってどこにあるのかな?こんな奴らがいるなんて信じられないな!というような不思議な気持ちになる人も結構いると思うんですね。
自分とは関係ない、自分の生活とは交わらない存在だと感じている人も結構いるかもしれない。
しかし、ビッグモーターの本社って六本木ヒルズにありますし、インテリ読者のあなたが普通に働いている都心のインテリジェントビルにもチラホラこういう会社はあります。
同じ通勤電車に乗って同じビルに吸い込まれている隣の人が、案外そういう「ブラック企業」の人である可能性だって結構ある。それぐらいブラック企業は日本社会において「日常の隙間」に存在している存在なんですね。
私は20年以上前に大卒後外資コンサルからキャリアを始めたんですが、そういう「外資コンサル的な理屈の世界」と「日本社会」があまりにも文化的に別個の世界になりすぎていて、この状況を放置していると大変なことになるな、という感じで危機感を感じていました。
で、ちょっとメンタルを病み気味になって退職した後に、次の職場を見つけるまでに「日本社会のすみずみまで色んな立場を実地で見る旅」をするぞ!みたいな青臭いことをやりまして、色んなブラック企業とか、肉体労働現場とか、あとたまたま駅前で声かけられたカルト宗教団体に潜入してみたりだとか、求人雑誌で見つけたホストクラブで短期間働いてキャバクラ嬢さんにドンペリを入れてもらったことがあったりとか、とにかく色々やってた時期があったんですよ。
”潜入してみたカルト宗教団体”は最近話題の某宗教で、その時の体験を連ツイにまとめたものは結構読まれたので良かったら以下をクリックして読んでみてほしいのですが…
色んな人が統一教会に勧誘された思い出話をしてるんで自分もしたい。プロフにある通り自分は外資コンサルやめてから『日本社会の上から下までちゃんと見る体験』が必要と思って肉体労働したりブラック企業で働いたりカルト宗教に潜入したりしてた時があって、その中で統一教会に潜入してた事もある。続
— 倉本圭造@新刊発売中です! (@keizokuramoto) July 12, 2022
上記のカルト宗教団体潜入体験もまあまあ衝撃的だったんですが、いくつかの「ブラック営業会社」に潜入した体験は同じぐらい衝撃的でした。
僕は別に富裕層とはとても言えない普通の中流家庭出身ですけど、親がまあまあインテリ体質で「営業マン的人種」を嫌ってるタイプの人だったこともあって、なかなか人生の中でこういうブラック営業カルチャーの会社と出会ったことがなかったんですよね。
でも、「とにかく色んな日本社会のリアルを見なきゃ」とか言う感じで、リクルート社の求人雑誌を見て、ターミナル駅前のインテリジェントビルに入ってる会社に入ってみたらこういう「ブラック営業会社」だった事自体に、個人的にはかなり衝撃を受けました。
何社かで働いたけど、例えば「30万円とかの浄水器を訪問販売する会社」では、ゼンリン社の地図をコピーして切り抜いて、今日はここねー!って言って社員みんなでそこまでクルマで行って、一日中訪問販売してまわるという焼き畑農法あるいは狩猟採集民的?なビジネスモデルなんですが、
「水道局から来ました」
って言ったら嘘になるけど
「”水道の方”から来ました」
って言ったらなんか”公的”な存在っぽく聞こえるからそこからアポイント取って実際にローン組んで買ってもらうという仕事(笑)
正直言ってさすがに倫理観的にやってられんな、と思って結構すぐやめちゃいましたけど、こういう仕事が日本社会にはあちこちにあるんだな、っていうのは結構カルチャーショックを受けました。
さすがに上記の「狩猟採集民」的な会社は小さな雑居ビルにありましたけど、もっと大きな駅前の巨大ビルにある会社は、上記のカルチャーのままもうちょっとシステマティックに運営されているという感じで。
「ビッグモーター」はさらにその上位のお化け的存在という感じで、フェアに言うならさっきの浄水器の会社よりは何十倍も「まともな正業部分」を持っていたでしょうし、多分本社で働いている一握りの人はまあまあホワイトっぽい環境に見せかけていつつ、一方で現場店舗に行くとそういう根性論的なカルチャーの延長が残っているという感じだったのかなと思います。
(ちなみにこういう「営業系ブラック会社」に比べると、物流や建築なんかの「肉体労働系の会社」は仕事自体はきつくても当時の待遇はまあまあ悪くなかったし雰囲気自体は断然良かったです)