ドイツ通信(DPA)によると、ウクライナ戦争に動員されたロシア兵士の親族による「息子を家に帰せ」という抗議活動(プーチ・ダモイ運動)が10日行われ、モスクワとエカテリンブルク市では警察当局が数人の女性たちを逮捕した。ウラル山脈のエカテリンブルクでは、兵士の記念碑に献花中の5人が私服警官に連行されたという。
インターネットポータル「ソータ」の情報によるとまた、モスクワでは警察が女性たちの運動を取材中のジャーナリスト2人を連行し、一時拘束した。警察当局は抗議活動に参加しないように警告しているが、「プーチ・ダモイ」(Putj domoi)運動はソーシャルネットワークを通じてモスクワ中心部での集団行動への参加を呼び掛けている。
戦争が長期化すれば、前線の兵士不足が出てくる。ウクライナだけではなく、ロシアでも兵力不足は深刻だ。ドイツ民間ニュース専門局ntvのモスクワ特派員によると、ロシア軍の兵士募集担当はタジキスタン、ウズベキスタン、キルギスタン出身の若い労働者に声をかけ、ロシア旅券を提供し、一時金を支払い、リクルートしているという。また、「動員されて以来、500日が過ぎたが、まだ夫が戻ってこない」と訴えるロシア人女性の声が報じられている。
夫や息子の早急な帰宅を求める声はロシアだけではなく、ウクライナでも聞かれる。ただ、ウクライナの場合、侵攻するロシア軍から祖国を守るという意識が国民や兵士の間にはあるが、ロシアの場合、国民はプーチン氏の独自の歴史的ナラテイブに踊らされ、若い兵士たちは大義のない戦争犯罪行為に駆り出されている。
出兵した息子や夫の帰宅を願う声は切ないものだ。日本でも終戦後、出兵した息子がシベリアから引揚げ船で戻ってくるのを岸壁の埠頭から今か、今かと待ち続ける母親の心を歌った二葉百合子さんの「岸壁の母」(作詞:藤田まさと、作曲:平川浪竜)を思い出す(歌の舞台となった舞鶴は当方の生まれ故郷だ)。
ウクライナ戦争が始まって間もなく2年が終わるが、ロシアの家庭でもウクライナの家庭でも戦場に駆り出された息子が戻ってくることを待ち続けている。戦争はどのような理由があろうが、非情で過酷なものだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年2月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?