さて、流行といえば話題の会社に群がる投資家という切り口もあります。ベトナム初のEV製造会社、ビンファストという会社があり、同社がアメリカ進出を狙い、発行株数のわずか1%程度を市場に放出し、アメリカ市場に乗り込みました。結果、どうなったか、といえば驚くことに株価が大暴騰し一時、自動車業界ではテスラ、トヨタに次ぐ3位につけたのです。私の株価ウォッチリストにも入っています。8月には一時90㌦を超えた株が一体どこまで下がるのか、妥当な株価はいくらなのか、投資家の心理はどう変化するのかを見続けています。今、18㌦まで下がりGMと同じぐらいの企業価値となっていますが、アメリカ国内での1-6月の販売台数が850台のこの会社の価値は個人的には1㌦以下だろうとみています。
投資家のマネーは流行というより「足」と称し、「足が早い」とか「戻り足」といった表現を使います。彼らはディトレから長期投資まで極めて多彩で様々な視点の人たちのマネーのバトル場で流行には極めて敏感だと言えます。
車の話ついでに皆さんの大好きなテスラの話題を振りましょう。テスラは価格の値下げ攻勢を北米と中国で展開していますが、中国については危険信号を感じています。理由は中国政府の「iPhone虐め」。政府や国有企業での使用を禁じる指示が出ており、露骨なアメリカはずしを行っています。
中国は自国での技術確立までは第三国の会社を三顧の礼で迎え入れるものの自国での技術確立と共に「投げ捨てて」「市場から葬り去る」ことを繰り返しています。今回はファーウェイが最先端技術を搭載したスマホを発表したタイミングと重なります。アップルの次はテスラよ、お前もか?になりかねないリスクは当然あります。
中国以外の市場でテスラはEVのディファクトスタンダードを掴むかもしれませんが、売れ行きとは別に車に対する興味を急速に萎ませつつある気がします。つまり今やコモディティなのです。高級車でもないし自慢する車でもありません。日本の方は驚くかもしれませんが、ここバンクーバーもEVだらけ、特にテスラは多く、あの独特の電気音の車がブゥーンと「闊走」していますが、「Youはなぜ、EVに?」と聞けば政府などのインセンティブが大きく買い手からすると「安いから」なのです。多分、これでは続かないだろうなぁとみています。テスラの中古車がこれからどっと増えるはずですが、値崩れは相当なものになるでしょう。
我々ビジネスをする者としては戦々恐々なのです。今日売れているものが明日は全然ダメになる、そういう超速のビジネスサイクルにどう打ち勝つか、多分、AIですら追い付かない人々のマインドの揺らぎは結局、人間という個体と現代の技術のギャップが広がり過ぎた故の当然の事象だということかもしれません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年9月8日の記事より転載させていただきました。
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