社会人になり仕事をしていると、もっと時間を自由に使えて休めたらいいのに・・・。一度や二度そんなことを思ったことがある人も多いはず。
ですが、ヨーロッパでは1年に1回程度2週間から1ヶ月の長期休暇をとることは当たり前とされています。羨ましいー!!!
そのような違いを生んでいるひとつの理由が、今回ご紹介する「労働時間貯蓄制度」。
名前の通り労働時間を貯蓄し、その時間を自由に使うことができる制度です。日本ではあまり広まっていませんが、ヨーロッパ特にドイツでは、1990年代から導入されており、250人以上の事業所のうち8割が採用しているほど。
日本ではどうして広まっていないのでしょうか? そして、導入するための糸口とは?ここに働き方改革のヒントもありそうですね。さっそく見ていきましょう!
労働時間貯蓄制度の基礎知識
労働時間貯蓄制度とは、基本となる労働時間を定めた上でそれ以外の時間に働いたらその時間を貯めておくことができる制度。貯めた時間を有給休暇としたり、その分で1日の労働時間を短くすることができちゃうんです。
つまり、自分が働けるときに働く、休みたいときに休むことができるので、自分の生活やライフスタイルに合わせて時間を使うことができるんですね。貯蓄できる時間の上限や残高の清算が可能な期間の規定は、個々の企業や契約の内容によって異なります。
休暇や日常のプライベートに割く時間とすることはもちろん、育児や介護のほか、資格取得のための勉強にあてる人もいるそう。特に女性は事前に積み立てた時間を産休や育休として使えば、その後のキャリアにおいてマイナスになることを避けることができます。
メリットは個人だけでなく企業にも。企業は、残業に必要な手続きや追加の手当の支払いが不要になります。また残業代を稼ぐために長時間働く労働者を減らすことができ、残業代を抑えることができます。
そして長期的に考えた場合のメリットは、労働需要が変動した際に労働力の調整を従業員数ではなく労働時間の調整をすることで対応ができるということ。結果的にリストラを回避し、人材を確保しておくことが可能になります。
実際に労働時間貯蓄制度を導入したら・・・
実際に労働時間貯蓄制度を導入したら・・・ちょっと考えてみましょう。
このように使い方に関して考えることが労働者のストレスになってしまう可能性があります。また休暇の長さや取る時期がばらけてしまうと連絡が取りづらく、プロジェクトが進みにくいといったトラブルが起きることも充分考えられます。
そもそも職場が休暇を取りやすい環境でないと、結果として残業代が発生しないサービス残業が増えてしまい、労働状況はさらに悪化してしまいます。
どうしてドイツは労働時間貯蓄制度が広まっているの?
そんなデメリットがありつつも労働時間貯蓄制度を取り入れている企業が多いドイツ。もともと先進諸国の中でも「最短水準の労働時間」と「高い生産性」を保っています。
経済協力開発機構(OECD)の調べによると、2014年の一人当たり平均年間総実労働時間は、日本が1729時間であったのに対し、ドイツは1371時間。にもかかわらず、ドイツの職場における労働時間1時間当たりの生産性は60.2ドル。日本は41.3ドルなので、日本のほぼ1.5倍の高さ!
さらに日本の有給休暇は年平均18.4日ですが、ドイツは30日。ちなみに、フランスも同様に30日、英国やイタリアなどでも25日。有給休暇の取得率は日本が47.6%だったのに対し、有給休暇の消化を義務づけるヨーロッパ諸国では100%近い水準となっています。
ヨーロッパ諸国と比べると、日本の生産性の低さ、有給消化率の低さ、有給消化の短さは顕著。どうしてそのような違いが生まれているのでしょうか。
労働時間貯蓄制度の効果ももちろんありますが、最大の理由は労働者の自分で働く時間と休む時間をコントロールしやすい職場環境や労働時間への意識の高さ。
ドイツでは、仕事は人ではなく企業に付くようになっています。例えば、顧客が問い合わせをしたときに担当者が長期休暇を取って不在であっても、他の人が問い合わせにきちんと答えてくれさえすればOKというのが当たり前。
そのため、休みを好きなタイミングで取っても罪悪感や不便さを感じずに済み、むしろ当たり前の権利として自由に使えるものだという認識が根付いています。
日本では、ドイツとは逆に「この業務は自分でなければ務まらない」という意識が強いのがひとつの特徴。顧客は担当者が2週間も休暇を取っていると聞いたら・・・その先は考えたくない方もいらっしゃるのではないでしょうか(笑)この特徴が日本のサービス水準の高さに結び付いているのも事実ですが、休みの取りにくさの理由のひとつになってしまっています。
労働時間貯蓄制度の前にまず休暇を取りやすい環境づくりから
労働時間貯蓄制度が日本ではあまり広まっていないのは、そもそもの仕事のやり方や休暇に対する意識が労働時間貯蓄制度と合わないところに原因がありそうです。
休暇に関しては、日本では有給を自由にとれるという環境になっていません。実際に厚生労働省が2014年に実施した有給休暇の取得に関する調査によると、回答者の68.3%が有給休暇の取得に対して「ためらいを感じる」と答えており、ためらいを感じる理由(複数回答)に対しては、「みんなに迷惑がかかると感じるから」(74.2%)、「職場の雰囲気で取得しづらいから」(30.7%)、「上司がいい顔をしないから」(15.3%)、「昇格や査定に影響があるから」(9.9%)と、休暇を取りやすい環境ではなく、日本人特有の周囲の視線を気にしてしまうことや空気を読むことがこういったところでも発揮されているようですね。
ということは、日本に労働時間貯蓄制度を導入するためにはまず有給取得率を上げることが導入への一歩となりそうです。実際に、休暇を取りやすくする環境づくりを進めている企業が増えてきています。
ファンコミュニケーションズの「プラスワン休暇」では、飛び石連休の際、土日祝日に挟まれている平日に有休を取得する「飛び石連休有給促進制度」、土曜日が祝祭日の際、前日金曜日もしくは翌々日月曜日に有休取得を推奨する「ハッピーサタデー制度」、三連休のない月の第3金曜日に有休取得を推奨する「残念月制度」など、有給以外にも休みを積極的にとることを推奨するような制度を設けています。
メディプラスでは、社員の休み方をアドバイスする「CSO」(チーフ・スマイル・オフィサー)を設置。CSOに生涯の過ごし方を人生の最後からさかのぼって考え、計画を立てる“バックキャスティング”をベースにアドバイスをしてもらうことができます。
最後に
日本では「残業をなくす」ために様々な制度が取り入れ始めつつありますが、結局休日出勤や家に持ち帰る人も増え、根本的な労働環境の改善につながっていない・・・ということも起きています。
であれば、少し思考を変え、時間を柔軟に使えるようにする「労働時間貯蓄制度」をヒントに、休みをとりやすい環境づくりから働き方改革を考えてみてもいいかもしれません。
文・とやまゆか/提供元・Fledge
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