Q. ではなぜ共産主義は独裁になったんでしょうか?

マルクスは、ソ連や中国のような農業国で共産主義革命ができるとは考えていませんでした。ロシア革命は、第1次大戦でロシアが敗北して混乱したとき、たまたまテロリスト集団がそれを乗っ取ったまぐれ当たりでした。

中国では蒋介石の国民党が民主国家をつくろうとしていましたが、そこに日本軍が介入して国内を混乱させたため、農民を組織した毛沢東の共産党が、まぐれ当たりで勝ってしまったのです。

Q. 共産主義は独裁になるしかないんでしょうか?

そんなことはありません。「ユーロコミュニズム」と呼ばれたイタリア共産党(今は左翼民主党)などの西欧の共産党は、民主的な政権交代をめざしていました。イギリスの労働党もドイツの社会民主党も社会主義です。

共産主義や社会主義は経済システムですから、民主主義か独裁かという政治システムとは別の問題です。ソ連や中国で共産党政権が独裁になったのは、民主主義の歴史がなく、所有権が確立していなかったためで、例外的な現象です。

Q. 共産主義の国では言論の自由がないのですか?

現実のソ連や中国では言論が統制されていますが、これも共産主義の本質ではありません。むしろマルクスは、共産主義によって労働者が貧困や強制から自由になる「自由の王国」をつくろうと考えていたのです。

Q. 共産主義は大谷翔平選手の年収を1億円に制限するものなんですか?

斎藤幸平さんのように共産主義を知らない人はそんなことを言っていますが、マルクスは「所得を平等にする」と言ったことはありません。むしろ所得再分配は「生産様式を変えないで結果を変えようとするナンセンスな制度だ」と批判しています。

共産主義の目的は、『共産党宣言』にも書いてあるように私有財産の廃止です。これは生産手段を資本家が独占するのではなく労働者が共有するもので、分配の平等をめざすものではありません。

Q. 共産主義はなぜ失敗したんですか?

生産手段を共有するという共産主義の目的は必ずしも間違いではなく、インターネットでは通信インフラが世界に共有されています。効率性という点では、公共インフラは共有したほうがいいのです。

しかし生産物がみんなの共有になることがわかっていると、それを生産するインセンティブがなくなります。いくら働いても1億円以上は税金で取られる国からは、一番かせげる人は出て行き、みんなが貧しくなります。

Q. 共産党の「民主集中制」は共産主義に必要なんですか?

民主集中制は「民主的に選ばれた党員による中央集権制」という意味ですが、レーニンの指導したボリシェヴィキは、社会民主党の少数派なのに武力で党大会を制圧し、その主導権を取りました。

他の国の共産党でも、党首が民主的に選ばれたことはなく、民主集中制という言葉が使われたこともありません。これを使い始めたのは日本共産党で、それも志位委員長の長期政権を正当化するために使われた言葉です。

Q. 共産主義には今でも意味があるんでしょうか?

共産主義という言葉は死語ですが、社会の「コモン」をみんなで共有しようという思想には意味があります。しかし今それを主張するのは、たいてい斎藤さんのように自分で生産しないで、他人の生産したインフラにただ乗りする人です。

電力インフラが「コモン」だと主張する再エネ業者はそのコストを負担せず、国会議員に賄賂を渡していました。このようにインフラを共有する思想がいかに危険かを知る上では、共産主義を学ぶ意味はあると思います。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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