車中泊という言葉の解釈の違い
辞書(スマホアプリの大辞林)で「車中泊」と引くと、「自動車や列車の中で寝泊まりすること。車内泊。」とあった。
言い換えれば「車とつくものの中で寝る」だけの意味で、細かな定義などは何もないようだ。
また、こうして改めて確認してみると、私がクルマを宿やテントの代わりとして利用し始めた頃は、「車中泊」はどちらかといえば夜行列車や寝台車の中で夜を明かすことを指していたように思う。
しかし、いつの間にか「車中泊」は移動中の列車やバスの中で寝るという意味より、駐車した車両の中で寝泊まりする意味として使われることの方が多くなったようだ。
そして、その駐車場所として、道の駅の駐車場や高速道路のSA(サービスエリア)やPA(パーキングエリア)などを利用する人は多い。
これらは半ば商業施設のための駐車場のような趣もあるが、元々は安全運転のために運転者が休憩や休息を取るために設けられた場だ。
だが、これらの場所で仮眠や休憩は良いが車中泊はダメであるといった意見や、車中泊での利用はグレーなどといったような見解もある。
では、休憩・休息・仮眠・寝泊まりなどの意味について、また辞書で調べてみた。
「休息は仕事などをひとまず終えて短時間または長時間休む意を表し、休憩は仕事や運動などの途中で少しの間休む意」となっていた。
何だか非常に曖昧ではあるが、どうやら休憩より休息の方がより本格的な「お休み」とでも言いたいのであろう。
寝泊まりなんて、「そこに寝て夜を過ごすこと」としか書いていないし、仮眠は「短時間の浅い眠り」だった。
では短時間はどうかと言えば「短い時間」としか書いていなくて全く具体性がない。
長時間も同様の説明。
全てが曖昧でバカバカしくも思えるような説明でしかないが、眠ってしまったら休息の意味から外れてしまうなどといったこともどこにも書かれていなかった。
十分な休息を取ろうと思ったら就寝することもある。
曖昧な表現ばかりだが、これらを総合して、十分な休息を取るためにクルマの中で寝たらどういう意味なるかと言えば、それは車中泊したことになる。
そして、安全運転のために適切な場で就寝して十分な休息をとることは運転者の義務でもあるから、道の駅・SA・PAの駐車場などで車中泊をすることはグレーでも何でもなく正当性のある行為ということになる。
しかし、勘違いしないでいただきたいのは、ここで「道の駅・SA・PAの駐車場では車中泊をする権利がある!」などと声高に主張しようというのではないことだ。
先程、車中泊が手段の人と目的の人がいると書いたが、車中泊をすることを目的にそこに向かったのであれば、休息することが目的で立ち寄ったのとはまるで意味が違ってくる。
車中泊を休息の手段ではなく、目的としか考えてない人からしたら、道の駅・SA・PAの駐車場を車中泊に利用することは「本来の目的外の利用方法」との解釈になってしまうのだと思う。
一理ある。
SNSの車中泊関連のコミュニティで、権利の主張派と自粛警察のような人達との間で大バトルが繰り広げられているのを目にしたことがあるが、大きな原因はこうした解釈の違いにあると思う。
しかし、プロのドライバーを含め、車中泊が本当に運転の途中の休息(仕事などをひとまず終えて短時間または長時間休む意)である人が大勢いるのも事実で、その人達からすれば、「道の駅・SA・PAの駐車場での車中泊禁止」はお門違いな攻撃でしかない。
また、逆に過剰に権利を主張する人達が、本当に休息をとるためだけに駐車場を利用しているのかといった疑問も湧いてくる。
これとは別に、自分の目で確かめたわけではないので真偽は定かではないが、施設側で車中泊禁止を謳っている道の駅もあると聞く。
しかし、それが本当なら国土交通省の考える趣旨に反してしまうことにもなる。
では何故そうなってしまったのか?
想像でしかないが、駐車場にオーニングやテーブルや椅子や調理器具などを広げてしまう、洗面所を炊事場代わりに使用して汚していく、盗電、連泊(休息に時間の定義はないが、さすがに連泊をドライブ中の休息と呼ぶには無理がある)、トレーラーを切り離して駐車したままどこかへ出掛けてしまうなどの行為があり、困り果てた挙句の措置といったところではないかと思う。
これは想像でしかないが、だとしたら 苦肉の策であり、本当に気の毒に思う。
しかし、「車中泊すなわちこうした行為」ではないのだから、「車中泊禁止」には合点がいかない。
こういったモラルやマナー以前の非常識な迷惑行為をする連中が全面的に悪いわけではあるが、面倒でも一つ一つの迷惑行為を禁止にすべきであって、善人が連帯責任を取るような形となってしまうのもおかしなことだと思う。
商業施設のための専用駐車場ではないのだから。
他にもある車中泊の解釈や認識の違いによるズレや誤解の実例
車中泊のベテランという人が「夏の暑さの回避方法」に対する質問で、「標高の高い涼しいところへ行く」と答えていたのを以前目にしたことがある。
これは先程2タイプに分けた後の方、車中泊をすること自体が目的の人に対しては的確で良いアドバイスだと思う。
しかし、車中泊が手段の人は行きたいところがあって車中泊をしているわけで、例えば海岸近くで車中泊する際の何か良い暑さ対策はないかと探していたのなら、これは何の解決策にもならない回答だ。
この回答者は「車中泊をすること自体が目的」しか頭になかったのであろう。
以前仕事でキャンプ場を利用した際にこんなこともあった。
そこは夏期の限られた期間のみ有料のキャンプ場として営業する公営の施設なのだが、[ 車両の駐車料金 + テント一張の料金 + 人一名分の料金 x 人数 ]で算出する料金設定となっていた。
それで私は、「クルマで寝るからテントは張らなくていいかな」と言ったところ、管理人のおじさんから「クルマで寝るなら〇〇円だよ」と言われたのだが、その金額が奇妙なことに駐車料金 + テント一張分と同額だったか、むしろ高かったのだ。
因みに車中泊なら外部電源が使えるなどのサービスが付加されることもない。
「じゃあテント泊にするか」と言ったら、管理人のおじさん達皆が「そうだよ。そうした方が良いよ」となったので、車両一台とテント一張分の料金を払うことにした(うろ覚えだが、やはり同額ではなくテントを張らないほうが高額だったのだと思う)。
しかし、占有面積が少なくて済む方が(しかもその時乗って行ったクルマはバモスだったから軽自動車)料金が高いとは、なんとも理不尽な話だ。
それで、なぜこんなことになるのか理由を考えてみたのだが、多分役所の中にいて現場には来ない人達は、「寝るためのクルマ」=大きなキャブコンやバスコンと想定(車両が大きいだけでなく、大きなオーニングとかもある姿も想像したのではないかと思う)し、占有面積が乗用車一台 + テント一張分より大きくなることが前提でこの料金設定を考えたのではないかと思う。
そう考えると合点がいかなくもない。
そして、現場にいるおじさん達はその設定に従うだけで特に何も考えることもなく、クルマで寝る = キャンピングカーの料金としていただけなのではないかと想像した。
管理人のおじさん達に何も罪はないし、私はゴネたりしなかったが、これを不服と思う人も少なからずいそうだ。
それで管理人のおじさん達が嫌な目にでも遭ったりしたら、知識不足と雑な認識が招いた悲劇としか言いようがない。