ウィーンで国連および他の国際機関担当の中国の王群大使は、「長年にわたりUNIDOとの健全な協力を維持しており、世界開発構想(GDI)の推進と実現に関してUNIDOと全面的な協力を行う用意がある」(新華社)とエールを送っている。

一方、ミュラー事務局長は、過去40年間の中国の大きな変化や貧困緩和と雇用創出における同国の成果を挙げ、「UNIDO加盟国、特に発展途上国は中国の開発経験から学ぶことができる」と中国を称賛し、中国が提案するGDIを支持している(中国新華社2023年2月11日)。

中国側の狙いは、UNIDOに技術、知識、投資の移転の架け橋を期待し、「一帯一路」と積極的に関わり、投資プロジェクトの持続可能性を確保しながら貧困削減と雇用創出という途上国へのプラス効果を支援していくというのだ。

ミュラー事務局長は、「『一帯一路」は17の目標と169のターゲットからなる『持続可能な開発目標(SDGs)』達成の促進剤の機能を発揮できる」と指摘。具体的には、資金不足を解消してクリーンエネルギー、産業、インフラ、気候変動への強靱性への投資などを促進できるという期待だ。

なお、中国の王毅外相は18日、「第3回フォーラムでは、『一帯一路」』協力を質の高い新たな段階に引き上げるという合意に加え、団結、開放、ウィンウィンの協力などを含む4つの成果が得られた」(新華社)と述べている。

いずれにしても、中国側は国際的な批判が出てきた「一帯一路」を発展させていくために、米国、英国、カナダなど欧米主要国が脱退したUNIDOを引き寄せて、欧米の技術、知識、投資を利用していこうというわけだ。

李勇氏は事務局長時代の2018年4月、中国メディアとのインタビューの中で、「UNIDOは中国共産党と連携し、習近平主席が提唱した『一帯一路』関連のプロジェクトを推進させてきた」と語った。同発言は5年後の2023年、非常に現実味を帯びてきているのだ(「ファーウェイが国連を支配する日」2019年3月7日参考)。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年10月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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