奇妙なエレベーターの映像と水タンクでの発見

 まもなく、警察はセシルホテルの防犯カメラ映像をウェブサイトで公開した。映像には、失踪当日のラムさんがホテルのエレベーター内で奇妙な行動をとる様子が映っていた。

 粗い映像の中で、ラムさんはエレベーターに乗り込み、すべての階のボタンを押す。エレベーターの中と外を繰り返し出入りし、廊下に向かって体を傾けたり、奇妙な手の動きをしたりしている。誰かとかくれんぼをしているようにも見えるが、映像にはラムさん以外の人物は映っていない。

 この謎めいた映像は、カナダや中国でも話題となり、何百万人もの人が視聴した。映像公開から2週間後の2月19日、ホテルの作業員サンティアゴ・ロペス氏は、屋上の貯水槽の中でラムさんの遺体を発見した。水圧が低い、水道水に奇妙な味がするという宿泊客からの苦情を受けて貯水槽を確認したところ、遺体が浮かんでいたという。

 ロサンゼルス消防署の署長は遺体を引き上げるために貯水槽の水をすべて抜き、側面を切り開く必要があったと述べている。一体なぜラムさんは貯水槽の中にいたのだろうか?

謎の死をめぐる憶測と裁判  ラムさんの遺体が、映像で着ていた服を着たまま貯水槽の中で発見された経緯は、未だ謎に包まれている。ホテルのスタッフは、ラムさんが一人でいるところしか見ていないと証言している。

 しかし、ラムさんが亡くなる前に彼女を目撃した人物がいた。近くの書店The Last Bookstoreのオーナー、ケイティ・オーファン氏は、ラムさんがバンクーバーの家族のために本と音楽を買っていたのを覚えているという。

 検死の結果、ラムさんは双極性障害の治療薬を服用していたことが分かったが、アルコールや違法薬物は検出されなかった。検死報告書では、薬物やアルコールの痕跡がなかったことから、ラムさんの死因はうつ病とされ、「事故」として処理された。

 しかし、インターネット上では様々な憶測が飛び交った。Redditユーザーが検死報告書の要約を共有し、ラムさんが抗うつ薬と気分安定薬を服用していたこと、抗精神病薬は最近服用していなかったことが指摘された。

 双極性障害とうつ病を患っていたラムさんは、薬を正しく服用していなかった可能性があり、抗うつ薬を不適切に使用すると躁症状が現れることがあるため、エレベーター内での異常な行動は薬の影響ではないかという意見もあった。

 ホテルの支配人エイミー・プライス氏の証言によると、ラムさんは最初は相部屋に宿泊していたが、ルームメイトから「奇妙な行動」を指摘され、個室に移されたという。しかし、精神的な問題があったとしても、なぜ貯水槽の中で亡くなっていたのだろうか? 多くの疑問が残る。