順番が乱れた文字で構成されているのに、違和感なく読めたのではないでしょうか。

この不思議な現象は「Typoglycemia (タイポグリセミア)」と呼ばれ、単語の最初と最後の文字が正しければ途中の文字が多少入れ替わっていても、脳が全体の意味を認識できるとされています。

ただし、この現象は科学的に実証されたものではなく、インターネットで広まった仮説の一例です。

これは元ネタは海外ですが、日本語でも成立するため、日本のネット上でも、「ちんゃと よゃちめうコピペ」として広まっていました。みなさんも下のようなコピペ文を見かけたことがあるでしょう。

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日本で流行ったタイポグリセミアの例を示したコピペ。実際は研究ではなくケンブリッジ大学も関係ない。

では、なぜタイポグリセミアが起こると考えられるのでしょうか?

それは、脳が単語を一文字ずつではなく、全体の形状やパターンとして捉える性質があるためです。

脳は膨大な情報を効率よく処理するため、単語の「大まかな形」を通じて意味を推測します。

そのため、脳は効率的にパターンを利用して認識し、最初と最後の文字が正しければ、途中が多少入れ替わっていても補正して意味を理解できるのです。

タイポグリセミアはアルファベットで特に顕著に現れます。

例えば、「information」を「ifnromtaion」にしても、ほとんどの人が元の単語として認識できます。

これはアルファベットが個別の文字で構成されているため、単語全体の形が崩れにくく、読みやすいためです。

一方、日本語のようにひらがなや漢字で構成される言語では、タイポグリセミアは見られにくい傾向にあります。

ひらがなは表音文字であり、一文字一文字の音が意味を構成するため、ある程度順番が乱れても脳がパターンや文脈から補完し、正しい言葉として認識することができます。

例えば「こんにちは」と「こにんちは」というように、ひらがなの順番が乱れていても、多くの日本語話者は問題なく「こんにちは」と読み取れます。