日経に「定年後の『1人起業』広がる 低リスクが成功の秘訣」とあります。記事の中で取り上げられた元商社マン氏は63歳で定年退職し、起業、現在起業10年目で売り上げ1億円、利益で得られる収入は年間100万円とあります。「小遣い稼ぎ程度の年収だけど、もともと個人で責任を負える範囲で商売するつもりだった」と満足している、とあります。
売り上げ1億円で収益100万円では利益率は1%、普通では商売として成り立たないレベルです。が、この元商社マン氏は自分の経験を生かしたビジネスができることに喜びを感じ、一種の定年後の「現役延長戦」に臨んでいるのだろうと考えています。
ここまで割り切って考えることができる人は実はそう多くないだろうと思います。なぜなら起業することでその忙しさ以上に事業者としての責任を負っているからです。
事業は基本的に永続性の原則があります。期間限定の場合はパートナーシップ形態などでそれを当初から謳っているケースが多くなります。それでも多くのシニア起業家は株式会社形式にされると思います。理由は取引相手が会社形式ではないと嫌がるからです。ところが株式会社とは永続性があるわけで定点退職後、お気楽勝負で数年間ビジネスできたらいい、ぐらいだと違和感が出てきてしまうのです。
私の周りでもシニア起業をされた方は何人もいますが、正直、数年以上続いている人は10人に1人いるかどうかです。なぜならビジネスがさほど簡単ではないことは自分で事業を立ち上げないとわからないからです。
だいぶ前にこのブログで日本の名刺は社名、肩書、そして個人名がある、と申し上げました。つまり名刺を渡す相手に対して自分の所属している会社名と私の責務(ポジション)を見てもらい、個人名である山田太郎は二の次という扱いなのです。
ところが多くの日本で定年間近の方は「おれは〇〇をやって来た」という強い自負を持っています。どの程度実務をされたのか、プロジェクトのリーダー的存在だったのか、ここは本人しかわからない話であります。