持ち帰り可能な店と、できない店の違い

 こうした顧客志向の取り組みがコメダ人気の秘密の一つとみられるが、飲食店では食べ残しを持ち帰り可能な店と、持ち帰りできない店がある。その違いの理由はなんなのか。自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏はいう。

「『持ち帰っても大丈夫か』『衛生上安全か』が重要な判断基準となります。汁物など形状的な問題なら容器でカバーできますが、卵料理や生ものは衛生的安全を確保するのが難しいため、食べ残しの持ち帰りをNGにしているお店がほとんどだと思います。店内飲食では生ものや、味や食感を重視して火入れを途中で止めた料理を提供していても、持ち帰りとなると、持ち帰ったあとの保存状態、食べるまでの時間など、お店として責任のとれない不確定なリスクが生じます。料理が冷めてから容器の蓋を閉めるなど、きちんと対策をとってテイクアウトを提供しているのとは異なり、食べ残しはお客が口をつけていたり、室温でテーブルの上に長時間放置されている場合もあります。『お客の自己責任』とはいえ、食中毒などが起きてしまえばお店の責任を問われるリスクもあります」

 食べ残しを持ち帰り可能にするのは、店舗にとっては結構大変な労力・対応が必要になるのか。また、店側にとってコストやリスクの増加などはあるものなのか。

「持ち帰り可能か否かを店として決めるにあたって、労力・コスト増、スペース確保などの点も判断材料となります。持ち帰りを認めるとなると、持ち帰り用の容器を準備しておく必要や、それを保管するスペースの確保の必要が出てきます。チェーン系の大型店であれば保管スペースを確保しやすいでしょうが、街場の小さなお店は普段から各種スペースの確保に頭を悩ませているところも多いので、できれば余分なものは置きたくないでしょう。また、スタッフが分刻みで動いていることも多いので、食べ残しの容器への詰め直しや包装作業は避けたいところでしょう。対応に要する労力やコストは一つひとつは大きくはなくても、塵(ちり)も積もれば山となりますし、衛生上のリスクもあるため、できれば避けたいというのが本音だと思います」(江間氏)

持ち帰り可能にすることによる影響
 では、食べ残しを持ち帰り可能にするかどうかで、店舗の売上・利益に大きな影響が生じるものなのか。

「大きな影響までは出ないと思いますが、小さな影響はあると思います。『あそこのお店は食べ残しが持ち帰れるから行こう』といった主な来店動機にはならなくても、食べ残してしまったものを『もったいないな』と思っているところに『よろしければお持ち帰りにしましょうか?』とスタッフが声を掛けてくれれば、『親切なお店』という好印象を持ってくれることにつながります。持ち帰りができることが分かっていると小食の人も普通にオーダーでき、料理を多めにオーダーするお客さんも出てくるでしょう。お店の売上は小さなことの積み重ねや各種要因のミックスによって成り立ちますから、対応が可能だと思うお店は取り組んでみてもいいのではないでしょうか。ただし、親切心やエコの気持ちからの行動が思わぬトラブルにつながってしまう可能性もあるため、お客さんには『●時までにお召しあがりください』と期限を伝えることをお勧めします」(江間氏)

(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)

提供元・Business Journal

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