この水に濡れたイヌが体をブルブルと震わせる行動は、研究者たちに「Wet dog shakes (WDS)」と呼ばれています。
WDSは、イヌを含む多くの哺乳類で見られる行動であり、体中の毛深い皮膚から水やその他の刺激物を取り除く役割を果たしています。
特に、背中や首は動物たちが自分で舐めることができない領域であり、WDSの働きが重要です。
しかし、これまでWDSを引き起こす神経メカニズムは研究されておらず、イヌや他の動物たちがどのようにして体をブルブルと震わせているのか分かっていませんでした。
そこで今回、ギンティ氏ら研究チームは、濡れたマウスがどのように体を震わせるのか調べることにしました。
水を浴びたマウスが体を震わせる時の神経メカニズムを解明
最初に研究チームは、震え行動の原因を詳しく調べるため、マウスの背中と首に数種類の刺激を与えてみました。
水だけでなく、風を当てたり油を塗ったりしたのです。
その結果、それらどの刺激でも、マウスは体の震え(WDS)を引き起こしました。
つまり、マウスは「自分の身体が水でずぶ濡れになったから」と考えて、意図的に体を震わせているわけでも、水で体温が下がったので自動的に体を震わせたわけでもありません。
動物たちは、皮膚が受けた機械的刺激に反応して体を震わせていたのです。
次に研究チームは、マウスがWDSを引き起こす際の神経メカニズムを詳しく探るため、遺伝子操作、生体内カルシウムイメージング(ニューロンのカルシウムを測定し、情報伝達経路を観察する手法)などを用いて分析しました。
その結果、マウスの震えには、「C-LTMR(C-Low Threshold Mechanoreceptor/C-低閾値機械受容器)」という感覚受容器が大きく関係していることが明らかになりました。
C-LTMRは、主に体毛が生えている皮膚に多く分布しており、痛覚や強い圧力には反応せず、軽い接触や撫でるような刺激に応答することで知られています。