いずれも水深1000〜4000メートルの間の「ミッドナイトゾーン」と呼ばれる深海に生息していました。
研究者らはこの生物の種属がまったくわからなかったため、「謎の軟体動物(mystery mollusc)」というニックネームを付けています。
しかし正体不明である一方で、度重なる目撃例から数多くのサンプル標本を回収できており、充実した生態調査を行うことができました。
具体的には約50匹の「謎の軟体動物」を採集して、解剖やゲノム解析、摂食や繁殖、行動の詳細を調べています。
研究者いわく、新種と見られる深海生物をここまで詳しく調べられたのは初めてだという。
その結果、これは裸鰓類(らさいるい、Nudibranch)というグループに分類される新種新属の生物であることが特定されたのです。
裸鰓類は軟体動物の一群であり、ウミウシを代表的な種とします。
つまり、この生物はウミウシと同じ仲間なのですが、他の種とは違い、史上初の深海を自由遊泳するタイプのウミウシだったのです。
史上初の「深海を泳ぐウミウシ」と判明!生物発光もできる
一般的なウミウシはサンゴ礁を含む浅い海に生息し、藻類や海綿動物、イソギンチャクなどを食べて生きています。
ウミウシは世界に5000種近く存在するとされていますが、その行動範囲は基本的に浅い海に限定されており、深海に生息するタイプはこれまでほぼ知られていませんでした。
深海の「海底」を這って生活するウミウシがわずかに確認されているのみだといいます。
MBARIの海洋生物学者であるブルース・ロビソン(Bruce Robison)氏は「ほぼすべてのウミウシは浅瀬の海底に生息しているため、これほど深い場所で自由に泳ぐウミウシの新種が見つかったのは非常に驚きでした」と述べています。