トランプ氏が圧勝し、議会も共和党がしっかり押さえそうなアメリカをみて私は「民主主義の雄、アメリカ」の見方を変えるべきか悩んでいます。悩んでいるというのは昨今の民主主義のあり方について議論百出で、新しい民主主義のあり方を模索している中でアメリカがその道を示すことができるのか気になっているのです。
ご承知の通り、世界は過半数が権威主義になっており、民主主義を標榜する国は減りつつあります。民主主義国家は権威主義国家とイデオロギーの相違から対立姿勢を強めるわけですが、政治思想の相違ですから双方が話し合いをして簡単に解決できるものではありません。むしろ、「臭い物に蓋をする」発想で核心には触れず、経済や人流といった双方にメリットあるものを部分的にうまく制御しながら推進してきたとも言えます。
ところで民主主義国家と対立するのは何かといえば権威主義ではなく、専制君主制国家であり、遠い昔はこの形態が主流でありました。現代でも専制君主制を取る国は残っています。その多くは中東でサウジアラビアやアラブ首長国連邦など国王制や首長制が残っている国々です。権威主義国家は民主主義と専制君主国家との間という位置づけで学術的には必ずしも対立関係ではありません。
さて、今回トランプ氏は相当のパワーを持って大統領に就任します。その際、得意とする二国間ディールで様々な交渉を進めていくはずですが、政治大国である中国、ロシア、及びEUとどのような交渉をし、外交関係を築くのか大きな着目点になります。
トランプ氏は選挙では圧勝でしたが、実質的には分断化されたアメリカをうまく利用して選挙戦を制したと考えています。つまりいつの間にかアメリカは一つのイデオロギーではなくなってしまい、古い民主主義の思想である51:49の理論のもと、51が49を支配するという発想です。
氏のこの強い発想の根源はビジネスマンである背景があるのだと考えています。事業者にとって株主の権限を論じる際、概ね数や%の理論で収れんするからです。ビジネスや法律、あるいは選挙を含む物事の判断の過程で数の理論は今でも健在であり、49のグループは泣かねばならないのです。