ちなみに、カトリック教会では、告解の内容を命懸けで守ったネポムクの聖ヨハネ神父の話は有名だ。同神父は1393年、王妃の告解内容を明らかにするのを拒否したため、ボヘミア王ヴァーソラフ4世によってカレル橋から落され、溺死した。それほど聖職者にとって「信者の告解」の遵守は厳格な教えなのだ。
今回の告解に関するガイドラインでは、赦しの秘跡を授ける際の条件が定められている。告解の際は、聖職者の個人的な部屋で行うことはできない。教会、告解室、特別に用意された告解室以外の場所での告解は、巡礼や病者の場合などの例外を除き禁止される。告解は基本的に昼間に行う必要があり、神父はその際に聖職者の衣服、少なくともストラ(聖職者の帯状の衣服)を着用しなければならない。特に感情が高ぶった状況での告解は避けるべきだ、といった具合だ。
また、新ガイドラインでは、告解神父の教育に特に重点を置いている。告解の許可を与える前に、司教は神父を適切に訓練し、告解の務めに適しているかどうかを確認しなければならない。神父証明書には、告解を聞く許可があるかどうかが記される。許可が与えられた後も、神学的、心理的、法的側面に関する定期的な研修が必要とされる。
同時に、告解の秘密の重要性について強調されている。この秘密は絶対的であり、破ることには厳しい教会法上の罰が科される。神父が告解の中で犯罪の疑いを知った場合、自ら通報したり他者に明らかにしたりすることはできない。しかし、告解者に自ら行動を起こすよう促し、必要に応じて教会や民間の当局に通報することを償いの一環として指導することはできる。赦しを拒否することは認められていない。
ところで、なぜ司教会議はここにきて「告解に関する新しいガイドライン」を制定したのだろうか。それは聖職者の「告解守秘義務」が未成年者への性的虐待問題で大きなハードルとなってきたからだ。告解神父が聖職者の性犯罪を告解を通じて知ったとしてもそれを公にすることが出来ない。それが教会の性犯罪の隠蔽に繋がってきたからだ。CIASEのジャン=マルク・ソーヴェ委員長(元裁判官)は報告書の中で教会の「告白の守秘義務」の緩和を提唱している。なぜなら、守秘義務が真相究明の障害となるからだ。