私がクシュタール社に期待したのは日本的なビジネス思想は同社にはないのでセブンのコアとなる日本独特のサービス提供についてはセブンの現状から大きく変えることなく、むしろ、アメリカのコンビニ事業の刷新、及び、サークルKやクシュタールなどのブランドネームを業態ごとにブランド化し、それぞれ特徴あるコンビニの売り場形態にすることにありました。

例えば大手ホテルチェーンはブランドネームを5つ以上持っています。顧客はそれぞれのブランドネームでそれぞれのホテルのサービス度がわかっているので様々な顧客の期待や要望を受け入れることができるのです。それを日本のコンビニで展開するなら24時間営業を含む利便性型、価格的にスーパーと競合できるタイプ、駅のキオスクやアメリカのガソリンスタンドのようなミニコンビニで商品の種類が限定されている中で高い利益率と少品種販売効率追求を目指すタイプといった具合にブランド化はいくらでもできるのです。

それなのにセブンはなんでもセブンで全くそのようなブランディング戦略を取らなかったのは北米でビジネスをする私からすれば「なんでだろう?」の一言なのです。日本のコンビニはレジで調理品を扱うのが当たり前となっていますが、それがすべての店舗で本当に必要なのか考える時期にあると思うのです。

それらがうまく展開できなかった現経営陣が日本史上最高額のMBOを実施するのはにわかに信じられないし、もしもそれで銀行団が乗るというならいったいどのような貸し付け資金回収計画を持っているのか聞いてみたいものです。井坂社長が30年までに現在のグループ売上17兆円超を30兆円にすると言っていますが、私は売り上げ至上主義ではなく、利益を上げる経営戦略がより重要だと考えています。

私はカナダでセブンに入ることはほとんどありません。理由は日本のセブンを知っている者にとってあれはセブンだとは到底思えないからです。