ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、軍最高指導者のザルジニー総司令官を解任し、後任に軍ナンバー2のシルスキー陸軍司令官を抜擢し、9日には新しい参謀総長にバルヒレビッチ少将が就任すると発表した。バルヒレビッチ氏がシャプタラ氏の後任となる。この任命はシルスキー総司令官の提案により行われた。
シルスキー新総司令官は、「ロシアの侵攻を防ぐために無人兵器システムと電子戦の使用を拡大したい。戦争の手段と方法の変化と絶え間ない改善によってのみ戦いに勝利できる」として、前線の軍隊に欧米兵器を迅速かつ正確に供給することが重要であると述べている。
ゼレンスキー大統領の軍トップの人事について、欧米メディアでは大統領と国民的人気のあるザルジニー総司令官の間に意見の相違が表面化していたからだ、といわれてきた。ただ、ロシア軍がウクライナ東部・南部で激しい攻撃を展開している時だけに、ウクライナ軍指導部のチェンジはタイミングは良くなかったが、ゼレンスキー大統領は軍指導部の刷新を決断したのだろう。具体的には、昨年夏以降のウクライナ軍の反攻作戦が、キーウが願っていたような成果が上げられなかったことから、今回の軍指導部の人事となった。
シルスキー新総司令官のプロフィールを少し紹介する。58歳の新総司令官は前任者のようなカリスマ性はないが、軍指導者として2022年2月のロシア軍のキーウ制圧作戦に対して、首都を防御した指導者として成果を挙げた。同年4月にキーウ地域からロシア軍が撤退した数日後、ゼレンスキー大統領は同年4月、この無名の将軍に同国の最高賞である「ウクライナの英雄」の称号を授与している。その半年後、ウクライナ軍がハルキウ北東部でロシア軍に大敗を与え、撤退を余儀させたが、その時もシルスキー氏の軍指導者の能力が評価された。
ゼレンスキー氏は守勢に立っているウクライナ軍の立て直しを「ウクライナの英雄」に期待したわけだが、軍指導者としての大きな成果にもかかわらず、国民から賞賛され、兵士たちから慕われていた前任者ザルジニー氏ほどウクライナ国民には知られていない。
ウクライナでは現在、疲弊した前線部隊の交代と新たな兵士の動員が議論されている。法案が議会に提出されている。この動員問題は、ゼレンスキー大統領が8日に解任されたザルジニー前総司令官との間で合意に達しなかったテーマだ。