ヨーロッパの冬を華やかに彩るカーニバル。ドイツ語では「ファッシング」と呼ばれ、冬の風物詩のお祭りです。時期は毎年変動しますが、一般的にウィーンでは、1月後半に盛り上がりはじめ、2月半ばから後半にかけてクライマックスを迎えます。
「第五の季節」と呼ばれるほど特徴的なイベントが多く開催される、この時期特有のウィーンの雰囲気や、楽しみ方をご紹介します。
ファッシングはどんなお祭り?
カーニバルといえば、ブラジルやイタリアなどで、派手な仮装や仮面をつけて街を練り歩くお祭りですね。ドイツ語圏では「ファッシング」と呼ばれて親しまれていますが、オーストリアでも例外ではなく、仮装や華やかなパーティーがいたるところで繰り広げられます。
ウィーンでは、他のドイツ語圏の街と異なり、仮装行列はあまり見かけることはありませんが、学校や幼稚園では仮装して登校、登園する日があり、授業の代わりに仮装パーティーが開かれます。
また、この時期のウィーンの大きな特徴として、舞踏会が開催されます。17世紀まではウィーンでも、街中を仮装行列が練り歩いてファッシングを祝っていました。しかし、騒音や治安、交通や衛生上の理由から徐々に規制が強まり、18世紀の「女帝」マリア・テレジアの時代の法律で、仮装行列の伝統は完全に下火になりました。
代わりに人気となったのが、貴族が宮殿で開催する「舞踏会」でした。ハプスブルク家の王宮「ホーフブルク」をはじめとして、ウィーン中の貴族が豪華な舞踏会を開催し、華やかなファッシングの舞台は、街角から宮殿や貴族の邸宅内へ場所を移しました。
マリア・テレジアの息子ヨーゼフ二世の時代には、この舞踏会文化は貴族だけではなく、庶民にも広がっていきました。18世紀後半にはダンス教室が創設され、一般人でもダンスを習い、ドレスを着て舞踏会に参加するという、現在のウィーン特有の舞踏会の伝統が確立されました。現在でもウィーンの若者は、ティーンになると1年半ほどダンス教室に通い、ウィンナーワルツや社交ダンスを身に着けます。
仮装と舞踏会の両方の側面を併せ持つ、仮面舞踏会も稀ながらあり、真夜中のダンスで女性が仮面を取る場面なども見られます。とはいっても、舞踏会はほとんどの人が恋人や夫婦、決まったダンスパートナーと参加するものなので、見知らぬ仮面の女性と知り合って踊るということは基本的にありません。あくまで舞踏会の目的は、ダンスフロアでウィンナーワルツを踊ることで、仮面は演出上の小道具という位置づけになります。
ファッシングの時期
ファッシングの始まりは、前年の11月11日11時11分とされていて、ドイツではこの日に盛大に祝う地域もあります。オーストリアでは一般的に、1月6日の三聖王の祝日が終わり、クリスマスムードが終わってから、ようやくファッシングの準備が始まります。この時期の特徴は、カラフルな華やかさとパーティー。街中は、原色やパステルカラーの飾りつけがあふれ、お祭りムードが漂います。
ファッシングシーズンは、イースターの47日前の火曜日(ファッシングの火曜日)に最終日を迎えます。イースター自体が移動祝日であるため、ファッシングの期間は毎年異なりますが、2月中旬から2月末までの年が多いようです。ラストスパートである最後の一週間が最も盛り上がる時期で、町中では舞踏会が毎日のように開催され、子供たちの仮装パーティーも数多く開催されます。
ファッシング最終日である火曜日の翌日は、「灰の水曜日」と呼ばれ、この日以降イースターまでの45日間は、キリスト教の伝統的な断食、断酒期間となるため、パーティーやイベント等は行われなくなります。