3割負担の目的は過剰医療の抑制

それを防ぐ対策も明らかだ。今のうちに窓口負担を増やし、過剰医療に歯止めをかけるしかない。一律3割負担にする最大の目的は負担増ではなく、受診抑制なのだ。

これについて厚労省はいまだに「受診抑制は望ましくない」という立場だが、受診抑制による健康への悪影響はほとんどないというのがオレゴン医療保険実験の結果である。

オレゴン医療保険実験の結果

もう時間は残されていない。団塊の世代が後期高齢者になる2025年までに3割負担を実現し、過剰医療をなくさないと、現役世代の保険料負担も窓口負担も加速度的に増える。

公明党は後期高齢者の党

ところが2020年に後期高齢者の窓口負担を引き上げたときも、公明党は2割負担に最後まで反対し、年収200万円以上に限定した。この成果を全国の公明党地方議員が支持者に報告した。

このとき厚労省は年収155万円以上を2割負担とする案を出したが、公明党は240万円以上を主張した。菅首相は170万円まで譲歩したが、公明党がねばり、結果的に200万円で合意し、2割負担の対象は23%に減った。公明党は、年収240万円以下の厚生年金受給者を丸ごと1割負担にしようとしたのだ。

その理由は明白である。公明党の支持母体である創価学会の会員は、高度成長期に地方から出てきた中卒労働者が多い。彼らは団塊の世代より上で、今は80代になり、まさに9割引医療の受益者なのだ。

しかし彼らも後期高齢者になり、党勢は衰退する一方だ。そこで自民党が170万円と決めたあとで首相とのトップ会談を開催し、公明党が限度額を200万円まで引き上げたとコア支持層にアピールしたわけだ。

問題は公明党だけではない。自民党はおろか、維新以外の野党もみんな3割負担に沈黙している。このままでは社会保障が破綻することはわかっているが、それより老人票が大事なのだ。こういう党に現役世代が鉄槌を下すチャンスは選挙しかない。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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