北朝鮮はこれまで6回の核実験を実施し、核爆発を重ねる度にその核能力を発展させてきた。2006年10月に1回目の核実験を実施した。その爆発規模は1キロトン以下、マグニチュード4.1だった。6回目の17年9月3日には爆発規模160キロトン、マグニチュード4.4だった。北側の発表では「水爆」だという。

韓国との経済関係を断絶すると表明する北朝鮮の金正恩総書記(2024年2月8日、朝鮮中央通信から)

興味深い点は、北朝鮮の6回の核実験で放射性物質が検出されたのは1回目と3回目のだけで、残りの4回の核実験後、キセノン131、キセノン133など放射性物質が検出されていないことだ。北の核実験で放射性物質が検出されにくい理由として、北朝鮮の山脈は強固な岩から成り立っているため、放射性物質が外部に流出するのに時間がかかるからだといわれている。

3回目の核実験の55日後に放射性物質が検出されたのは、北当局が核実験用トンネルをオープンしたのでキセノンが放出されたという。なお、核実験が行われた日の前後の天候も希ガス検出に影響を与える。気流の流れにも左右される。

北朝鮮の核実験の影響について、韓国の核物理学者らから、「北朝鮮の豊渓里核実験場では、2017年9月の6回目の核実験の際にすでに大地震が発生しており、トンネルや地盤の崩壊や陥没への懸念が続いている。核実験の爆発により実験場の地盤が崩壊した可能性がある」と警告する声が出てきている。

韓国気象庁の『2023年の地震年報』によると、北朝鮮の豊渓里付近での地震の数が2022年の3倍以上に増加した。専門家らは「マグニチュード3.0以上の地震の数は増加し続けており、今年はその可能性が高い。マグニチュード4.0以上の大地震が発生する可能性がある」というのだ。

例えば、北の最大規模の核実験では核実験場から南東約7キロ付近で地盤が陥没し、それに伴う揺れが発生したという。水爆の爆発によって周辺の地盤が揺れ、地震が発生したという説明だ。実際、アメリカの北朝鮮分析サイト「38ノース」は2017年9月5日、核実験場周辺の地形が崩れ、地形の変動が見られると報告している。

韓国の聯合ニュースは2017年9月5日、「北の核実験場がある北東部の咸鏡北道吉州郡で被爆した疑いが持たれる症状を訴える人が出ている」と報じた。核実験場周辺の住民への被曝は考えられるが、恐ろしいシナリオは、中国と北朝鮮の国境に位置する白頭山(標高約2744m)の噴火だ(「白頭山の噴火と第3回核実験」2011年3月11日参考)。