安倍派が抜けたら、岸田派、麻生派、茂木派には大打撃でしょう。今の野党には政権を担当する政策的能力も、統一できる政策思想もない。自民党が分裂して、維新の会、公明党、国民民主党などとそれぞれが組み、新しい政策集団を目指す。

以前の自民党にはエネルギーがあり、こんなこともやってのけた。今の自民党は世襲議員が幅を利かせ、婿入りして世襲に滑り込む高級官僚も少なくない。政治的エネルギーが失われている。だから安倍派の離党・新党結成は保守勢力の再生のつなげる機会にする。

世界は大変革の時代を迎えているというのに、民主党が一時、政権(07ー12年)をとったものの、自民党を軸にした日本政界の革新はありませんでした。安倍氏は最長の長期政権にたどりついても、退陣後、安倍派なるものの功罪がはっきりしてきました。

旧統一教会との癒着、異次元金融緩和・拡張的財政政策の行き詰まり、そして今回の政治資金の裏金問題です。安倍長期政権こそ「エイプリルフール」だったのかもしれません。

世襲議員ほど当選回数を重ね、政権のトップに上り詰める。世界はグローバル化を迎えているのに、小選挙区制を地盤とする家内制手工業のような政治的手法(地盤、看板、鞄)が幅をきかせ、政治人材の新規参入の道が閉ざされています。

産業界は外国企業との提携・買収、外国の人材登用・採用などを進めないと、生き抜いていけない。産業、科学、スポーツ、文化・芸術などに比べ、政界は圧倒的に閉鎖社会です。せめて「ガラガラポン」で、政界を再編するまたとないチャンスにしてほしい。

それを追う政治ジャーナリズムの遅れもひどい。政治情報は「誰と誰の関係がいい、悪い」「自民党内の内紛、不満、寝返り」など、ほとんど政治の本質から外れた舞台裏情報に明け暮れています。

新聞社・テレビ局では、外国人役員も、外国人記者の雇用もほとんどない。政界ともに政治ジャーナリズムが最も遅れたサークルです。ジャーナリズムの原点に立ち戻り、新しい視点で情報を提供しもらいたい。

編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2024年4月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

【関連記事】
「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
大人の発達障害検査をしに行った時の話
反原発国はオーストリアに続け?
SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
強迫的に縁起をかついではいませんか?