「国防ニュース」によると、ロシアの砲兵は、「砲弾の射程距離での系統的なばらつき」を批判し、「この結果、より多くの弾薬を消費する原因となっている。大量の弾薬消費は、運用時間を延長し、それによってウクライナの砲兵の反撃の危険性を高める。さらに、弾薬の大量消費は砲の摩耗を早め、それによって精度をさらに損なうことになる」と説明している。
期待が大きいとそれが外れれば、失望も大きくなる。上記の場合、ロシア兵は今使用している弾薬や手榴弾が北朝鮮で製造されたものであることを知らされているはずだ。ロシア兵はその北製武器の品質に米製の武器のような過剰な期待、命中率はそもそも期待していないだろう。にもかかわらず、戦場のロシア兵の間で北製の手榴弾、砲弾の質の悪さに不満の声が出るということは、品質が予想以上に悪いからだという結論が出てくる。
ロシア軍がウクライナに侵攻して1年半以上が経過し、戦いは長期戦の模様を呈している。軍事大国とはいえ、ロシア軍も弾薬、砲弾の在庫は無限ではないため、イラン、中国、北朝鮮から密かに手に入れているといわれてきた。北朝鮮からは高品質の先端武器を購入できないが、戦場での戦闘で使用する弾薬、砲弾、手榴弾を手に入れていることが今回の軍事ブロガーの記事でも実証されたわけだ。
プーチン大統領が9月、北朝鮮最高指導者金正恩総書記と会談し、ロシアと北朝鮮間の軍事協力の強化などで合意したといわれている。その最初の成果は北朝鮮の軍事偵察衛星「万里鏡1号」の打ち上げ成功だろう。過去2回、打ち上げを失敗してきた北朝鮮が先月21日、ロシアから偵察衛星関連技術の支援を受けた結果、3回目の打ち上げに成功し、「衛星は軌道に乗って周回して」いる。
一方、北朝鮮が鉄道や海路で北製弾薬などをロシアに輸送していることは米国の軍事偵察衛星でもキャッチされている。ところが、北製の弾薬などの品質の悪さが明るみになってしまった。プーチン大統領がロシア人軍事ブロガーの調査記事を読んだかどうかは分からないが、「焦るあまりに、北朝鮮の武器の品質についてじっくり考えなかった」と後悔しているかもしれない。
参考までに、世界日報の上田勇実ソウル特派員によると、「北朝鮮は軍事偵察衛星などに必要な最先端の軍事科学技術を習得するため、現在ロシアの大学や専門教育機関に派遣する国内の留学生や科学者ら約30人を選抜中である」という。選抜対象は金策工業総合大学や金日成総合大学など理系の優秀な学生が集まる大学に通う学生たちと科学技術者たち合わせて約30人。学生たちは3Dプリンターや人工知能(AI)、炭素繊維などで認知度が高いロシアの各大学に留学し、科学者たちはロシアの軍事科学技術を教育する専門機関に派遣される予定だという。
「3DプリンターやAI関連技術も大切だが、戦場で通常使用する弾薬、砲弾の品質向上こそ急務だ」――、プーチン大統領はこのように考えてため息をついているかもしれない。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年12月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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