プーチン大統領と金正恩総書記が「包括的戦略パートナーシップ」を締結しました。両国はソ連時代である1961年に軍事介入を含む友好協力相互援助条約を結んでいましたが91年のソ連崩壊に伴い、この条約は消滅。代わって2000年に友好善隣協力条約を結んだのですが、これは単なるお友達条約でした。今回のパートナーシップは軍事協力を含むものであり、より同盟に近いものとされます。
今回の動きについて個人的にいろいろ考えを巡らせてみたのですが、きっかけこそウクライナ戦争における軍需品調達先という意味合いで北朝鮮に白羽の矢が立ったわけですが、プーチン氏の考えは金正恩氏をうまく手玉に取る狡猾な頭脳プレーになりうると考えています。
北朝鮮は西側諸国から厳しい経済制裁を受ける中、その生命維持装置は歴史的に中国でありました。ところが私が見る限り、戦後の中国と北朝鮮の関係は高句麗、百済、新羅の三国時代の頃からの中国による朝鮮大陸への冊封の前提が崩れてきたとみています。金日成、金正日氏の流れで少しずつ中国が目の上のたん瘤に感じるようになりますが、それでも金正日氏は中国と持ちつ持たれつのお付き合いでした。ところが金正恩氏になると非常にドライになります。特にその行動変化はトランプ氏との3度の会合にありました。金正恩氏はアメリカ文化に憧れ、自分をアメリカが外交相手にしてくれることに興奮すら覚えたわけです。ところが実際の交渉では夢と現実のギャップを感じることになり、トランプ氏とも心の壁ができ、バイデン氏に至っては相手にすらしなくなったわけです。
その間、コロナで厳しい国内政策へのシフトを余儀なくさせられ、食糧や生活物資の供給においても中国に頼らざるを得なくなったのが実態でした。しかし、金正恩氏にとっては嫌で嫌でたまらなかったのでしょう。そこに現れたのがプーチン氏です。しかもミサイルなどの技術指導までしてくれるし、武器のみならず、人材の供与を通じて国内経済の立て直しのきっかけづくりになったとも言えます。よって金氏が今回のパートナーシップ話に飛びつくのはごく自然であったと思います。