地方の百貨店は厳しい状況

 最新の百貨店業界の構図について、中井氏はこのように語った。

「新宿高島屋は上がり続けてきた売上が2023年6月度の営業報告で前年比マイナスに転じるなど伸びがひと段落してきましたが、伊勢丹新宿本店は今年も変わらずに売上が大きく伸び続けており、決算で驚異的な数字を叩き出しそうです。業界トップの座はより強固なものになるでしょう。大阪の阪急本店なども相変わらず強く、名古屋なども含めて大都市部の百貨店はコロナ前の売上を上回っているところが目立ちます。そうした状況を見ると、大手百貨店は富裕層をターゲットにすることなどで今後も生き残ることができそうです。一方、島根県の一畑百貨店が来年1月に閉店すると発表し、全国で3つ目の『デパートなし県』が生まれることが確定するなど、地方の百貨店は厳しい状況が続いています。大都市部の百貨店のECサイトが充実すれば、地方の百貨店は地元の富裕層の顧客を奪われる可能性もあり、そうなれば地方百貨店の減少は加速するでしょう。都心部での電鉄系百貨店の衰退などもあり、業界は大きな過渡期を迎えているといえます」(同)

 大都市と地方、呉服店系百貨店と電鉄系百貨店で二極化が進んでいる状況。大都市を中心に百貨店が生き残っていくのは間違いないだろうが、その存在意義やビジネススタイルは大きく変化していくことになりそうだ。

(文=佐藤勇馬/協力=中井彰人/流通アナリスト)


中井彰人/流通アナリスト:取材協力
みずほ銀行産業調査部で小売・流通アナリストに12年間従事。2016年退職後、中小企業診断士として独立、開業。同時に、流通関連での執筆活動を本格化、TV出演、新聞、雑誌などへの寄稿、講演活動などを実施中。2020年よりYahoo!ニュース公式コメンテーター、2022年Yahoo!ニュースオーサーを兼務。主な著書「図解即戦力 小売業界」(技術評論社)。現在、東洋経済オンライン、ダイヤモンドDCSオンライン、ITmediaビジネスオンライン、ビジネス+IT等で執筆、連載中。
Twitter:@nakajalab

提供元・Business Journal

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