ここでは紙幅の関係もあり、深く(広く)は立ち入らない。ただ、一点だけ重要なポイントを指摘しておくと、企業でも学校でも何でも良いのだが、およそ政治行政関連以外の組織が、そのトップの選定を選挙で行わない大きな理由の一つは、選挙までのプロセスより、選挙の後の運営の方が遥かに重要だということを構成員が意識的、或いは無意識的に良く理解しているということである。
リーダーシップ論の世界では、これをelected leader(選挙で選ばれるリーダー)やappointed leader((前任者などに)任命されるリーダー)などと分類して、その功罪を比較検討するのだが、前者の最大のデメリットは、分断の促進である。
つまり、例えば企業や学校で社長や校長を選挙で選ぶとなると、投票日までの間、候補者Aと候補者Bが、双方の「派閥」などを通じて、激しい票取り合戦を演じ、時に現金やらポストの約束などが飛び交う形で、血みどろの争いを繰り広げることとなる。
結果、候補者Aが社長や校長になったとすると、候補者B側はどうなるであろうか。一応、どの候補者も建前では、「選挙が終わればノーサイド」「私は、AとB双方の陣営にとってのトップになるのであって、公平公正に組織を運営する」と言うに決まっているが、また、負けた側も、勝った側に全面的に協力する、と言うが、実際は簡単にはそうならないのは火を見るより明らかだ。
Aが勝てば、A派閥の人を要職につけるに決まっているのであって、また、BやB派の人たちは、Aのスキャンダル探しやそれによる失脚を必死に画策することになる。自然の摂理だ。
もちろん、選挙をしようがしまいが、A派閥、B派閥のようなグループは組織が大きくなればなるほど当然に存在することとなる。そしてそれらは選挙の有無に関わらず、時に対立する。
しかし、選挙という仕組みはそれをより顕在化させ、対立を過激にする。前任者とか、大株主とか、当事者同士を超える大きな存在が、「まあ、まあ、今回はAで行こう、次はBで行くから」とか、「全然関係ないが実力のあるCを連れてくる」などといった対策を施し、一応、民主的納得のプロセスを経て(役員会とか総会とか)、対立を激化させないようにする。大事なことは、選挙祭りを盛り上げることではなく、日々の現実、日常の円滑かつ効率的な運営なのだ。