実験操業ではなく、商業化しているはずの事業で稼動率22~23%というのは、風力発電以外ではめったに見ることのない数字です。もっともソーラー発電の場合稼動率5~10%がザラで、下には下がいるものですが。

あまりにも効率が悪いのに高賃金

「よくまあこれで存続する企業があるものだ」と感心するほど悪い数字が並ぶ稼動率にもかかかわらず、中国製造業の就業者たちの時給はアジア新興6ヵ国の中で比べると突出して高いのです。

他の5ヵ国の製造業就業者の時給が2~3ドルの範囲に集中している中で 、中国1国だけが8ドルを超えているのは異常です。とくに稼動率との兼ね合いで見ると勤務時間の4~5割は寝ていてもいいような操業状態でこんなに高賃金を取っているのは、どう考えても辻褄が合いません。

いったいなぜ、こんなに理不尽なことが起きるのでしょうか?

理由は大ざっぱに言って2つあると思います。ひとつ目は何ごとにつけても幹部優遇のお国柄だけに製造業でも役付きとその役付を監視することになっている共産党書記の給与水準が突出して高く、平均値を引っ張り上げていることです。

もうひとつは、おそらく中国の労働関連統計で製造業勤労者としてサンプルユニバースに入ってくるのは、都市戸籍を持って都市圏の工場や本社で正規労働者として働いている人たちだけだろうということです。

中国で経済成長の果実を享受できるのは都市戸籍を持つ都会人だけと言っても過言ではありません。農村に残って細々と農業に従事する自営農家は極端な低収入にとどめられたままで、ほとんど商店もない寒村の場合、そのわずかばかりの収入のかなりの部分を強制貯蓄させられます。

また都会に出た農村戸籍保有者は何十年経っても都市戸籍に編入してもらえず、経済的には農村に残った人たちより良くても、民工(出稼ぎ農民)として政治的・社会的には無権利状態のままに置かれています。

そんな中国の大都市中の大都市、政治首都北京と経済首都上海で今、倉庫の空室率が急上昇しています。