国内金融情勢だけでもそうとうなダメージが予想されますが、加えて国際金融の世界でも中国は大変な窮地に立たされています。
中国は毎年非常に大きな経常黒字を稼いでいるにもかかわらず、資本勘定では対内直接投資のほうが対外直接投資より圧倒的に多いという不思議な国でした。2013年まではだいたい自国から諸外国への直接投資の3~10倍の金額を、諸外国からの直接投資として受け取っていました。
なぜこんなことになっていたかというと、一党独裁の基礎が既得権益団体への利権分配でなり立っている国ですから、自身がカネ食い虫ナンバーワンである中国共産党幹部は、経常黒字を全部自国に持ち帰ったら大食らいのカネ食い虫揃いの既得権益団体によってたかり尽くされ食いつぶされてしまうことをよく知っていたからです。
どんなに悔しくても経常黒字のかなりの部分をほぼ無利子の米国短期債として、言わば後見人であるアメリカに預けておいて、その中からほんの一部を投融資として受け入れるときには高い配当や金利を払わなければならない金融属国だったのです。
その点では、大英帝国下降期にどんなに製造業で稼いでも利益の大半は宗主国イギリスに金融利益として持って行かれていた植民地時代のインドと変わらない立場です。なぜ米中関係の腐れ縁をこの角度に着目して分析しようとする方がいらっしゃらないのか、不思議です。
それはともかく、海外からの直接投資抜きでは経済が円滑に回らない中国で海外からの資金が急激に逃げ始めているのです。内憂外患こもごも来たるとは、まさにこのことでしょう。
少なくとも中国共産党一党支配体制を廃棄しないかぎり、中国がこの危機から脱する道はないと思います。
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