中野サンプラザは現状のまま放置か

――着工延期とのことですが、大幅な工事費増もしくは計画見直しが不可欠な状況ですね。

「事業者が野村不動産、東急不動産、住友商事、JR東日本、ヒューリックでしたが、今年4月にヒューリックは撤退しています。オフィス、マンション、ホテル、商業施設等が入る61階建てビルですが、(現行の中野サンプラザからの)容積率の割り増しで得た床を、事業者側が保留地として買い取る事業の仕組みかと思われます。このとき、工事費が上がると売却価格も上がるので、引き受ける予定のデベロッパー各社にしてみると厳しいのではないでしょうか。マンションを分譲する場合でも、オフィスを賃貸に出す場合でも、相場を大きく上回らなければならず、見込んでいた利回りを得られなくなります」(同)

――事業計画が進められないとなると、解体することもできず、現状のまま放置されることになるのでしょうか。

「その可能性が高いですね。これは中野に限った話ではなく、都内をはじめ全国各地で大型プロジェクトが止まるという現象が起きています。オフィスの賃料やマンションの販売価格が上がってくれば釣り合いは取れるのかもしれませんが、今のところは建築費だけが先行して上がっている状況で、事業の採算が合わないのです」(同)

――現在の計画では着工や完成の見込みが立たないということは、どこかしらの費用を削る必要に迫られるのは避けられないですね。

「規模を縮小するか、収益性の低い施設をやめるなど、大幅な見直しをしなければ建て替えは難しいですね。収益性が低いのは公共施設やホールということになるわけですが、区の権利があるので、これらをなくすことはできないでしょう。したがって、周辺の住宅価格やオフィス賃料などが大きく上がってこなければ、現状では事業の採算が合わないので、事業者としても動きたくないはずで、当面、計画を進めるのは難しいと考えられます」(同)

 建築費が高騰しているのは全国どこでも同様だが、大規模な事業では上振れる金額が膨大になる。中野区のシンボルだった中野サンプラザが、解体もできずに廃墟のようにたたずむ状況は、長引かせてほしくないものである。

(文=Business Journal編集部、協力=牧野知弘/オラガ総研代表取締役)

提供元・Business Journal

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