■ 2020年6月3日の過去記事
1日に報じられた産経・FNN世論調査で、次の総理にふさわしい政治家トップは18.2%の支持を得た石破茂氏だった。自民党支持層では16.0%に過ぎなかったが、立憲民主党支持層で42.9%、支持政党なしで76.0%の高い支持を得た。自民党の議員なのに、と思うがそれはおく。
筆者は石破氏に恨みもないし、それなりに見識のある政治家と思う。が、3年前の加計問題に関連して、地方創生担当大臣だった15年夏頃、獣医師会に便宜を図った疑いが報じられた、いわゆる「石破4条件」の落とし前を付けない限り、彼の総理などあり得ないと考える。
17年7月18日の産経記事にはこうある。
「学部の新設条件は大変苦慮しましたが、練りに練って、誰がどのような形でも現実的には参入は困難という文言にしました…」 平成27(2015)年9月9日、地方創生担当相の石破茂は衆院議員会館の自室で静かにこう語った。向き合っていたのは元衆院議員で政治団体「日本獣医師政治連盟」委員長の北村直人と、公益社団法人「日本獣医師会」会長で自民党福岡県連会長の蔵内勇夫の2人。
石破氏の語った「文言」とは、国家特区として獣医学部新設の盛り込みを閣議決定した「『日本再興戦略』改訂2015」(平成27年6月30日)の中の以下の文言。これが、いわゆる「石破4条件」として報道された。
獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討・・「現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要があきらかになり、かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には、近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。(121頁)」
筆者はこれに関し、今は削除されている15年7月10日(閣議決定10日後)に行われた「全国獣医師会事務・事業推進会議」議事録の北村直人日本獣医師政治連盟委員長の活動報告をWordに落とし保存している。長文だが貴重な資料なのでそのまま引用する。(太字は筆者)
日本獣医師政治連盟として、今まで新しい獣医師養成大学・学部の設置については反対をしてまいりましたが、本件について最終的に先日閣議決定がなされました。骨太方針あるいは成長戦略という言葉をニュース等々で皆様も目にされたと思います。
その中に、本当に小さく獣医師養成大学・学部の新設に関する検討という項目が出てまいります。その部分を読ませていただきますと『現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要があきらかになり、かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には、近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う』という文言が出てまいります。
3つの条件が付いています。つまり、新しい大学を作りたいところが既存の獣医師養成機関でないという構想が具体化すること、次に、獣医師が新たに対応すべき分野の需要の養成があるということが2つ目、かつ、16獣医学系大学で対応できない場合ということが3つ目の条件となりますが、その獣医師養成の大学・学部の新設の可能性はこの3つの条件によりほとんどゼロです。16獣医師系大学で対応できない獣医師はいない訳ですから、現在の獣医師学系大学でこれらができるということは当然です。石破担当大臣と相談した結果、最終的に「既存の大学・学部で対応が困難な場合」という文言を入れていただきました。
ただし、今後もこの問題は尾を引いてくると思います。つまり、日本の最高権力者である内閣総理大臣が作れと言えばできてしまう仕組みになっておりますので、こういう文言を無視して作ることは可能です。内閣がもしこれを行うのであれば私たちは現在の内閣に対して敵に回らざるを得ないのですが、獣医師会としては抵抗勢力にはなりたくない。抵抗勢力としてマスメディア等々で取り上げられ、獣医師会は抵抗勢力である、訳の分からないことを言っている団体だということになりますと、世論の風当たりは強いものとなります。
日本獣医師政治連盟といたしましては、先ほど申し上げました3つの条件は、既存の16獣医学系大学が今回の答申に対するコメントをするべきであるということが我々の見解です。そして、16大学から日本獣医師会、日本獣医師政治連盟による具体的な検討・対応を行うことが本筋であると考えております。
最終的には、今回の獣医師養成大学・学部の新設については、どこを読んでもこれを覆すような状況は一つも見当たらない。つまり、新しい獣医学系大学・学部の設置はできないということが今回の骨太方針、成長戦略の文言に書いてあると考えております。これをクリアする新たな獣医師の資格を作るのであれば別だと思われますが、現状では設置できないということが日本獣医師政治連盟としての見解です。繰り返しになりますが、日本の最高責任者がもし失言するようなことがあればできないことはないということは我々も腹にすえておかなければならないということだけ、ご報告させていただきます。
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