出席番号が遅い生徒はテストで低く採点される
アメリカでも、日本と同様に、出席番号順にテストが採点されていきます。
そこで今回、研究チームは、ミシガン大学の成績記録3000万件以上を調査し、評価と採点の順番がどのように関連しているのか調べました。
それらには、2014年秋から2022年夏までのすべての学生・課題のデータが含まれています。
分析の結果、出席番号順の採点では、姓が「A」「B」「C」「D」「E」で始まる生徒は、ランダムに採点された場合と比較して、100点満点中、0.3点高い評価を受けると分かりました。
また、姓が「V」「W」「X」「Y」「Z」で始まる生徒は、ランダムに採点された場合と比較して、100点満点中、0.3点低い評価を受けていました。
一方で、分析の元になった膨大なデータの中には、出席番号順(アルファベット順)の逆から、採点しているケースが約5%ありました。
そのケースでは、研究チームの予想通り、成績格差が逆転しました。
「Y」や「Z」で始まる名前の生徒は高く採点されており、「A」や「B」で始まる名前の生徒は低く採点されていたのです。
このことは、採点の順番が後になればなるほど低く採点されることを意味しています。
そしてほとんどのケースでは、出席番号順に採点がなされていくので、「出席番号が遅い生徒は不利」だということになりますね。
0.6点差と言われるとそこまで大きくないように思えるかもしれませんが、傾向としてはっきり現れており、これは採点者によっては影響が大きく出る可能性もあります。
学校の成績は、その後のキャリアに影響を与える可能性を考えると、無視すべき傾向ではないでしょう。
では、一体どうしてこのような「順番による成績格差」が生じるのでしょうか。
採点者の「疲れ」が否定的な評価につながっている!?
研究チームによると、順番が後ろになっていくにつれて低く採点される主な原因は、採点者の疲労だと指摘しています。
確かに何十人も採点を続ける教師は、後半になるにつれてどうしても疲れてしまいます。
その結果、彼らは不機嫌になるだけでなく、注意力が低下した状態で採点することになるのです。
研究チームは、採点の順番が後半になるにつれて、採点者が否定的で礼儀に欠けるコメントをしてしまう傾向があることも発見しました。
そして、これら採点者の傾向は、正解と不正解がはっきりしている選択問題では生じず、記述式問題で特に影響が出やすいと言えます。
実際、今回の分析でも、順番による評価格差は「社会科学」「人文科学」などの科目で顕著であり、「工学」「医学」などの科目への影響は小さかったようです。
社会科学などの課題では、解釈の幅が広く、採点が難しいものです。
不機嫌で注意力が低下した採点者は、これらの科目で無意識に低い点数をつけてしまうのでしょう。
とはいえ研究チームは、「教師たちを責めるつもりではない」ことも伝えています。
膨大な量の答案用紙を採点していくにつれて疲れてしまうのは、しょうがないことだからです。
解決策として、研究チームは、教師たちの作業負担を軽減させるよう勧めています。
場合によっては、追加の採点者を雇い、大勢で採点する必要があるかもしれません。
さらに、いつも出席番号順に採点するのではなく、ランダムな順番で採点することも提案しています。
そうすることで、特定の生徒たちがいつも不利になることを防ぐことができるというのです。
今回の研究は、アルファベット順にもとづくものでしたが、同じ傾向は、日本における五十音順の出席番号でも見られる可能性があります。
ランダムな順番で採点されない限り、「渡辺さん」や「山口さん」たちは、成績の面で、やや不利なのかもしれません。
参考文献
Study: Alphabetical order of surnames may affect grading
Your Initials Could Seriously Impact The Grade You Receive For an Assignment
元論文
30 Million Canvas Grading Records Reveal Widespread Sequential Bias and System-Induced Surname Initial Disparity
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。