今、改めてターボエンジンが注目されつつあります。お若い方はご存知ないかもしれませんが、昨今のダウンサイジングターボというのは「ターボの再登板」なのです。

エンジンの排気量を下げてターボが補う、燃費とパワーを両立する、これが現代におけるターボエンジンのトレンド。ターボエンジンは80年代にモアパワーを目的に一度台頭し、やがて燃費重視の時代になると下火になります。しかしここでまたターボが注目されるようになった理由とは何なのか、今と昔でターボの役割はどう違うのか…。改めて注目してみます。

Chapter
そもそもの理念は同じ、ターボチャージャー
ドッカンターボでイケイケだった80年代のターボ車

そもそもの理念は同じ、ターボチャージャー

ダウンサイジングターボの台頭…ターボは今と昔でどう違うの?
(画像=『CarMe』より 引用)

ターボチャージャーがエンジンの補助装置だという認識は皆様お持ちだと思います。排気のエネルギーでタービンを作動させ、過給器とし、シリンダーへの空気の充填効率を高めるという役割。こうして自然吸気よりも高い熱効率による高出力、高効率を得るという考え方は今も昔も同じです。しかしどうして今改めてまたターボなのか。そこにある大きな違いとは「目的」にあるといっていいと思います。

以前のターボチャージャーはあくまでも「馬力」。モアパワー、モアトルク、モアスピード、こうした「要求」から、いわゆる「加速装置」としての役割、目的で用いられていたわけですよね。ところが今注目され用いられている理由は、そうした面も多少はあるにしても、どちらかというとエンジン自体の「効率」を求めてのことです。だからタービン自体のサイズも違えば制御に関する考え方もまるで違う。同じターボだからといって昔のターボと同じようなものを想像していると肩透かしを食らうことになると思います。

メーカーとしてもそのあたりには苦慮しているようなところがあって、ユーザーの側が「ターボ」というだけで「パワー」を想像してしまうと、ダウンサイジングターボは全く目的も違えばフィーリングも違う物になっているので「物足りない」と思われてしまう。だからディーラーさんで説明を受けたりすると、そこを強調して「以前のものとは全く違う考え方なんです」ということを言われたりすることも少なくありません。

お若い方は、以前のパワーオンリーのターボをご存知ないため、スンナリ受け入れて頂きやすいダウンサイジングターボではあると思いますが、筆者も含め、アラフォー以上の世代には「ターボ」というだけで昔の「アレ」を期待してしまうようなところがある。これはもうジェネレーションギャップとしか言い様がないのですが、それくらい時代は変わり、ターボの役割や考え方が変化したということを認識しなければならないと…自分に言い聞かせているようなところもあります。

ドッカンターボでイケイケだった80年代のターボ車

80年代のパワー重視のターボ車の魅力といえばやはり、ある回転数から爆発的に加速力を発揮する「ドッカンターボ」ではないでしょうか。

ターボという装置そのものが物珍しく、ターボが付いているということが大きな付加価値、商品価値になっていた時代です。誰もがその爆発的なパワーに魅力を感じ、ターボを「感じたい」と多くの人が魅了されていたターボパワー。折しもF1ではホンダV6ターボが席巻している時代でしたから、日本人にとってターボ車というのはじつにタイムリーだった。メーカーが違うのに、Y31セドリックのカタログには「F1と同じV6ツインカムターボ搭載」という見出しまで用いられたほどです。

この頃の日本車はまだ足回りも十全なキャパシティを持っていたわけではなく、有り余るターボパワーを吸収しきれないようなところがあった。でも、そのやや乱暴なハンドリング、パワーでハンドルが取られるトルクステアやパワースライドなどが「運転している」「操っている」という実感に繋がったりして、そんなところを楽しめるという風潮があったのもターボを後押しした部分でもありますよね。

後に安全性が重要視されるようになるとパワーを制御するデバイスも生み出され、やがて燃費の時代に突入すると、パワー重視のターボエンジンはまるで潮が退けるように姿を消していくことになるのです。そこには排ガス規制の問題も存在しました。

多くのパワー重視のターボ車は、排ガス対策とパワーの両立が難しい代物だったというわけです。同時に、たとえばホンダでいうならVTECなどの自然吸気でも高出力を可能とするエンジンが台頭するなどして、ターボというデバイスでパワーを得るということがトレンドから外れていった、という側面もありましたよね。

こうして2000年代前半には、パワー目的のターボエンジンは一部を除きほぼ姿を消しました。これでもうターボ車にはお目にかかれないかもしれないな、と思っていると、早くもその数年後に欧州発信で新世代のターボエンジンが産声を上げることになるのです。