中国の将来を語れ、と言われても専門家であればあるほど「わからない」と答えるでしょう。なぜなら西側の考え方やルールとあまりにも違うからです。そして中国には隠ぺい体質があるため、都合が悪いことは突然ベールで覆うことをいとも簡単に行い、あたかもそれが当たり前である、という姿勢を示します。
米中関係が悪化しているとか、中国国内の規制が厳しいとされます。私から見ると習近平氏をトップとする指導部が必死に14億の民の生活と巨大になり過ぎた国家を小手先のパッチワークで処理しようとするも、既に強大な内部の不都合なマグマがたまり過ぎてしまった、そんな感じに見えます。
では仮に崩れるとすればどこか、ですが、やはり本命の不動産関連ではないかとみています。
中国が昨年、当時最大級と称した恒大集団の経営が悪化した際に西側企業であれば当然倒産するところを政府が介入し、潰さず、実質的に政府の支配下のもと、経営の再構築を行っています。なぜ潰さなかったかといえば市民生活に極めて重大な影響が出るとともに国民から強い不満が中国指導部を直撃、中国経済が日本のバブル崩壊のように一気に崩れる危険があったからです。
今月、恒大の財務諸表の2年分となる21年と22年財務諸表がまとめて発表されました。22年末の負債総額が48.6兆円、総資産が36.6兆円なのでマイナス12兆円の純資産となります。ただ、報告には「債務を段階的に返済し、正常な経営へと回復するための堅固な基盤」(China News Service)となっており、私にはこの日本語訳が宇宙人語にしか見えず、コメント不可であります。
さて、そんな中国政府さまの多大なるご支援のおかげで「回復途上」にある恒大集団を横目に今、最大の危機とされるのが碧桂園(カントリーガーデン社)です。22年度末では中国最大の不動産会社となったわけですが、オフショア社債取引を停止したことで株価が暴落、米ドル債の利回りが3000%という実質、破綻状態に陥っています。同社の債務は28兆円あり、ここが詰まると一気に連鎖倒産が起きます。中国政府は恒大集団に行ったのと同じような荒業に出るのか注目されますが、現状、「モグラたたき」のようなもので結局、火種は全部潰すことはできないだろうと察しています。
つまり、習近平氏の第3期においてその指導部のチカラの限界が見えてきたのかどうか、その瀬戸際にあり、土俵の際まで追いやられているというのが私の実感です。そして今回はかなり厳しいのではないか、とも感じています。
8月15日、中国の中央銀行である中国人民銀行は市中銀行向け1年物金利(MLF)を0.15%下げました。これは事前予想を完全に覆すサプライズとなっており、1週間後に控えるプライムレートの貸出金利をどの程度下げるのか着目されます。MLFの今回の0.15%下げは大幅なもので金融当局は現状がかなり厳しいと認識したものだろうと考えられます。
また、同日、16-24歳にあたる若年層の失業率の発表を突然やめてしまいました。6月の同失業率は21.3%で7月は学卒者が統計に表れることからどの程度悪化したか注目が集まっていたものです。また、中国の統計は何が基準かわかりづらく、一部では実質失業率は40%を超えているのではないかとする見方もあります。以前、ご紹介したように大学卒が急増する中、企業が大卒を吸収しきれず、一方、大卒者は「制服=工員」になりたがらず、という問題を抱え、家でプラプラしたり、ギガワークやバイトで食いつなぐ形とされます。